何でも見透かしたように
そんな、君の笑顔が嫌いだ
何時もニコニコと笑って
何時も、そうやって笑っているから
何時までも、ココにいるんだと
そんな錯覚に陥るんだ
笑顔の気持ち
「何か辛い事でもあるんですか?」
「・・福田か・・・」
「お前、今日オフやろ?」
「ええ、そうですよ」
サラリとそう言って、笑う。
仕事でもないというのに、ラジオ局の控え室にいる彼。
「ラジオの日でもないクセに、何でこんなトコにおんねん?」
「ん〜〜・・何となくですね」
「お前・・」
「警備員さん、僕の顔覚えてくれてるらしくて簡単に入れてくれたんですよ」
確信犯。
そうとしか思えない。
何時だったか、誰かが言っていた言葉を思い出す。
『福田は分かっているように思えるが、分かっていない行動をする』
何の事だか。
そう思っていた。
だから、聞いて直ぐに忘れていた言葉。
その意味が、何となく分かった気がした。
「何となくで、オフの日にこんなところ来るんか」
「イヤ、正確にはお二人がいると思ってきたんですよ」
何を言っているのか、コイツは。
達成感でも感じるような、そんな笑顔で。
でも、その理由も、何でそう感じるかも分からない。
何かを見透かされているようにも感じる。
そんな、コイツの笑顔が嫌いだ・・
「福田、ちょっと来い・・」
「え、何ですか!?」
「エエから、来い!」
「え、ちょ・・っ」
連れてきたのは、もうほとんど使われていない倉庫。
ちょっと強く腕を持ったせいか、腕を放して直ぐ福田は痛そうに掴んだ部分をさする。
「何なんですか、いきなりこんな所に連れてきて・・」
「この際やから、ハッキリ言うとくわ」
「何がですか?」
「俺等はな、お前がイヤやねんよ・・」
「・・・え・・高井さん・・?」
「お前に会うたびに、イヤな気分になんねん・・」
「中川さん・・?」
2人揃って、福田を睨む。
何故そんな事を言われたのか。
そんな事、分かるはずもないし見当も付かないだろう。
福田は、壁に背を預けている。
まるで、何者か分からない者に追いつめられたように。
「お前が、そんな笑顔でいられたら・・っ」
「俺等はな、そんな見透かされてるみたいなお前の笑顔が嫌いやねん!」
「僕は・・そんな・・・っ」
「お前、ココ来た時に訊いたよな?」
「何か辛い事あるんかってな?」
「・・はい・・・」
「その原因は、あるとすればお前や・・福田」
「お前とおると・・・お前と会う度に、イヤな気分になる」
「僕は・・そんな・・・僕は・・っ!」
知らぬ内に、涙がこぼれ始めている。
そんな福田を、冷めた目で未だ睨み付け続ける。
「もう、俺等の前で笑うな。仕事以外でな・・」
「行ってエエで・・」
「っ・・これだけは、言うときます・・・」
涙を手の甲で拭う。
そして、キッと視線を前へ上げる。
「僕は・・ただ、傍にいたかっただけなんです・・・それじゃあ、失礼します・・」
福田は、倉庫から出て行った。
出て行った鉄製のドアを見て、一息。
「・・・なぁ、高井」
「ん〜・・何や・・?」
「これで・・ホンマに良かったんやろか・・?」
「何言うとんねん、今更・・」
「せやったら訊くけど、コレで・・ホンマにコレでお前はスッキリしたかっ!?」
「っ!!」
何をやったのか、自分達は。
ただ、福田に半ば仕事以外でもう近寄るなと言ったようなもの。
それでも、福田は「傍にいたかっただけ」と言い残して去った。
本当にスッキリしたのか?
コレで
コレで本当に、良かったのか?
胸に何かを引っかけたまま、倉庫を出てラジオ番組の本番を迎える。
ラジオ終了後、プロディーサーに言われた。
今日は、何時もと調子が違う、と。
その理由は、自分達が一番分かっていた。
原因は福田。
仕事前に、あんな事があったからだ。
あんな事だけで、ココまで動揺を見せている。
どうしてかなんて、問いかけて答えてくれる者などいない。
あるとすれば、それは誰?
「あ、高井さんに中川さん」
「おぅ、徳井やんけ。何でこんな所おんねん」
「前ここに来た時に、忘れもんしたんですよ。
電話したら、整備のおばちゃんが見つけとったらしくて、取りに来たんです」
「コンビ揃って、仕事もないのになぁ・・」
「え?今日、福ココ来たんですか?」
「・・・あぁ・・」
「せやったら、福、嬉しそうだったでしょ?」
「「え?」」
「やって、福はお二人に会える時だけ、何時もよりよう笑うんですよ。
もう、子供みたいに。羨ましいですね、福がそこまでしてくれるお二人が」
それじゃあ、と、そう言って徳井は廊下を歩き去っていった。
フラフラと足がよろめき、壁にぶつかる。
そして、そのまま床へ座り込む。
「中川・・俺等、やっぱ間違っとったわ・・・」
「うん・・せやな・・・」
「イヤやったんやないんや・・ただ、良すぎたんや・・」
あの笑顔が、福田の存在が。
ただ、心地よすぎた。
そんな気持ちに気付きたくなくて、誤魔化したくて。
だから、あんな事を言った。
あんな事を言って、福田を傷付けてしまった。
「馬鹿丸出しやん、俺等・・」
「中川、どうするよ?」
「どうする言うたかてな・・今言えるんは一つや・・」
「多分、俺も同じやと思う・・」
福田に会いたい・・
君の笑顔が嫌い
でも
君といられる事が何よりも嬉しいよ
嫌いなんて気持ちも
消えてなくなるくらいに
君の笑顔が好き
何時までも、傍で笑っていて
END
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キリ番6700を踏まれた海莉さんに捧げます。
この話の続きですが、翌日仲直り(笑)
次の仕事が一緒だったので、その時に謝ったそうです。
福ちゃんは、倉庫で話した時よりも泣いちゃったそうです。
相当嬉しかったんですな(ニヤリッ)←意味不明
で、結構付き合いが多くなって、最終的にはアハハ〜ンな感じに(えっ!?)
こんな事考えている私は愚か者です(今更)

海莉

ありがとうございますー!!!

またもや私のわがままを聞いてくださって・・・。

本当に素敵な小説、ありがとうございました!