<恋の行方・愛の居場所>

例えばです。

動悸が激しくなったり、妙に挙動不審になったり変に隠れたりしたり。

やっぱりこれって・・・。

「堤下、俺やばいかも」

「うん、お前はいつもやばいよな」

相方はいとも整然と言いやがった。

・・・絶対殺すけどな。

「え?板さん、大丈夫っすか?」

梶がちょっと心配気味に聞いてきた。

あー、いい奴だね。

お前の相方は鏡と友達してるけどな。

「んー、動悸・息切れ多々。あと立ちくらみとかも」

「そりゃあ、えらい重症ですな」

「まぁ、今は大丈夫だけどな」

ばたんとドアが開いた。

一瞬、楽屋がシーンとなった。

比例して鼓動が高鳴る。

やばっ、聞こえるって。

「どないしたん?伊藤ちゃん、それ」

くるりと伊藤さんは回った。

蒼色の浴衣がきれいに波打つ。

「前の番組でね。時間なくてそのまま来ちゃった」

にこやかに微笑んで、軽やかに結われた髪が妙に艶かしい。

「おー・・・こーやって見ると・・・」

今まで鏡みてた奴が乗り出してきた。

「どーせ馬子にも衣装って言いたいんでしょ」

「いや普通にかわいいやん」

男前はさらっとそんなことを言いはなった。

「でも、まぁ普通の子はここにはいらんけどね」

「わかってますよーだ」

からからと明るい笑い声が響く。

あ、イライラしてきた。

わかってんだけど、西野が伊藤さんに絡むのは趣味みたいなもんだって。

理性ではわかってんだけど。

「梶、俺ダメかも」

「はいぃ?さっき大丈夫って言ってたやないですかぁ?」

パタパタ、目の前に伊藤さんが立った。

「板さん、大丈夫?」

下から覗き込んでこられて、また調子が狂った。

困る、困りまくる。

「あ、大丈夫・・・」

「ならよかったvv」

じゃ着替えてくるね、と伊藤さんがあまりに無邪気に笑って言うから、なんか素直になれる気がした。

「似合ってるよ、それ」

「・・・ありがとvv」

「なー、板さんの体調不良の原因って・・・」

「わかりやすいだろ、俺の相方」

「言うてあげたほうがいいんやないですか?病気ちゃうって」

「まぁ言わなくても死ぬことはないだろ」

例えばです。

この微熱にも似た症状に名をつけるなら。

やっぱりそれは「恋」でしょうか。

おわり

なおさん、最高です(感涙)

いいねぇ、板伊!!