<永遠>


「一人は嫌やねん」
「は?」
深夜、ネタ合わせの最中に岩尾が後藤に言った。
「何言うてんねん、自分」
後藤は怪訝そうな顔をするが、岩尾は今にも泣き出しそうな顔をしている。
「のん?」
後藤が岩尾の顔を覗き込むと、岩尾は目から涙をこぼした。
「一人は嫌やねん・・・後藤くん、何処にも行かんといて」
「俺はここにいるやろが」
「だけど、いつかは離れていくやろ?」
「離れていかへん」
「・・・あいつもそう言うてた」
「・・・」
後藤は黙って岩尾を抱きしめた。
岩尾は子供のように後藤にしがみつく。
「夢見たんや・・・後藤くんが離れていく夢・・・」
「それはただの夢やんか」
「でも不安やねん」
「・・・のん」
「後藤くんも、いつかはあいつみたいに離れていくんや」
「・・・」
「僕を一人にせんといてよ。もう一人は嫌やねん」
「・・・・一人になんかするかい」
「・・・後藤くん?」
「俺はお前と離れる気なんかこれっぽっちもないねん」
「・・・ほんま?」
「お前が嫌んなるくらい一緒にいたるわ。いっそ、一緒の墓にでも入るか?」
「それはムリやで」
「ムリなことあるかい」
後藤は岩尾を抱きしめる腕に力をこめる。
「死ぬまで一緒にいたる」
「・・・後藤くん」
「あ?」
「ありがとう」
「・・・おう」
笑顔で自分に抱きついてくる恋人を抱きしめながら、後藤は内心で溜息をついた。
「(人の気も知らんで・・・)」
岩尾の言う自分が離れていく夢。
後藤はその逆の夢を今までに何回も見ていた。
岩尾が自分から離れていく夢を見るたびに、何度も狂いに満ちた感情が溢れ出そうになったことか。
「のん・・・」
「なに?」
「一人になんかせぇへんからな」
「うん」
内心で蠢く感情を落ち着かせるように、後藤は岩尾を強く抱きしめた。

end

コメント
あいつ、とは岩尾さんの前の相方さんですね。
岩尾さんはまだ未練があるのかも?
そして、後藤さんは少し病んでるんですかね。
岩尾依存症?です。