<女装パニック!!>


「嫌やーーー!!!」
スタジオに梶原の叫び声が響きわたった。
「そんなに嫌がらんでもええやんか」
「嫌がるに決まってるじゃないですか!!」
逃げる梶原に笑顔で近付く菅。
「約束したやろ?負けた方が勝った方の言うこと聞くって」
「・・・う・・」
それは昨晩のこと・・・。
菅と梶原は二人で居酒屋に来ていた。
そこで、菅が梶原に・・・。
「先につぶれた方が負けやで?負けたら勝った方の言うこと何でも聞いたること」
という、勝負を持ちかけたのだ。
「ええですよっ」
少し酒が入り、ほんのりいい気分になっていた梶原は軽く承諾したのだが・・・。
結果は当然、梶原の負け。
というか、菅は酒がめちゃめちゃ強かった。
そのことを梶原が知らないということをわかっていた上でそんなことを言った菅は確信犯と言えよう。
「大体、菅さんがあんなに酒強いなんて聞いてませんよ!」
「せやったー?でも、負けは負けやしな」
「・・・うぅ」
「おとなしく言うこと聞けや!」
「嫌やーーーーっ!!!」

数十分後・・・。
「やっぱり俺の思った通りやなっvv」
「・・しくしくしく」
「あんまり泣くとぐちゃぐちゃになんで。せっかく綺麗にしてやったのに」
「菅さんのバカ」
「何とでも言えや。さ、行くで」
「・・・どこにですか?」
「皆のと・こ・ろvv」
「嫌ですっ!!!」
「あー、聞こえへんわ」
「嫌やー!」
嫌がる梶原をずるずると凄い力で引きずっていく。
梶原は必死で逃げようとするが、菅に力で適うはずがないのだ。
そして、皆のいる楽屋に到着。
「あれ、菅ちゃん何処行ってたんです?」
「んー?ちょっとなvv」
「ふーん。梶どこ行ったか知りません?」
「さぁな?どこ行ったんやろなー?」
西野の問いにニヤニヤしながら自分の背後をちらりと見やる。
そんな菅につられるようにして、西野も菅の背後を見やった。
すると、そこにいたのは菅の背中に隠れるようにしている女の子。
「誰?その子、菅ちゃんの彼女?」
「ぶっ!」
西野の言葉に吹き出す菅に対し、女の子の肩がぶるぶると震えた。
そして・・・。
「・・・に、西野の阿呆ーーー!!!」
「え?えぇぇぇ!?か、梶ーーー!?」
「阿呆!何ですぐわからへんねん!!」
「な、なんでそんな恰好してんねん・・・」
「・・・っつ////」
今の梶原は白いフリフリのワンピースを着ていた。
頭には長い茶髪のウィッグをつけられ、顔にはうっすらとメイクがほどこされている。
どこからどう見ても、可愛い女の子にしか見えない。
「ほんまはミニスカートとかはかせてみたかったんやけどな・・・脚細いし」
「絶対に嫌ですっ!」
「せやからワンピースにしたやんか」
「でも・・・これでもかなり恥ずかしいですよっ!」
「コントで女装したことあるくせに」
「あ、あれは・・・コントやから平気なんであって・・・」
「で、でも可愛いで?梶」
「全然うれしないわ!」
西野の顔はあきらかに喜んでいた。
女装した梶原が気に入ったようだ。
「西野も可愛い言うてるやんか」
「・・・絶対に菅さんの方が似合いますよ」
「俺?俺は女装似合うで」
「・・・」
「せやけど、自分が女装するより女装させる方が楽しいやんかvv」
「・・っつ・・・も、もう脱いでいいですか?」
「あかん!」
「な、なんでですか!」
「俺が満足するまでそのままや」
「・・・っつ」
梶原は涙目で菅を睨み付けた。
しかし、そんな可愛い恰好で(しかも涙目)睨まれても効果はないわけで。
否、別効果があるだけ。
「梶、かわええvv砂糖菓子みたいやvv」
菅はギューッと梶原を抱きしめた。
「あ!菅ちゃん何してんねん!」
「なんや?西野」
「梶は俺のですよ!」
「いつそんなん決まったんや!」
「コンビ結成時に」
睨み合う二人。
菅の腕のなかで苦しそうにしている梶原。
そんなムードの中、非常に明るい声が二人の間に割り込んできた。
「お前ら何してんねん」
「たーちん・・・」
「うわっ、顔怖いで・・・。あれ?それ誰やねん」
中川が菅の腕の中にいる梶原に気が付いた。
そんな中川に続いて、高井が楽屋に入ってくる。
そして、真っ先に梶原を見つけて目を丸くさせながら呟いた。
「・・・梶?」
「え・・・梶なん!?お前、何でそんな可愛いかっこしてんねん!」
「う・・・高井さ〜ん」
菅から何とか逃れ、高井に泣きつく梶原。
しかし、いつもなら受け止めてやる高井も、はんぱなく可愛い梶原に顔を赤くするばかり。
「か、梶?////」
「す、菅さんがぁ・・・」
「ちょ、その・・・」
「ずるいで、トシ!梶、俺にも抱きついてや?」
笑顔で梶原に手を広げる中川であったが、高井が梶原を強く抱きしめる。
「なんやねん、トシ」
「高井さん?」
「たーちんなんかの所に行ったらきけんやぞ、梶」
「危険って何やねん!」
「言葉通りの意味や」
「っていうか、高井さん!梶を離してや!!」
菅が梶原を高井から奪い返そうとするが、高井は梶原を離そうとしない。
「高井さん・・・?」
「梶、ちょっとええか?」
「え?・・・うわぁっ!?」
『あーーーーーー!!!』
菅、西野、中川の大声が見事にハモった。
高井が梶原を抱き上げて逃走したのだ。
しかも、お姫さま抱っこで・・・。
「た、高井さん!?」
「梶、早よそれ脱ぎたいんやろ?」
「は、はい」
「お前の服どこにあんねん」
「えと・・・向こうの控え室ですけど」
「向こうな」
「え、あの・・自分で歩けますよっ/// 」
「ん?梶軽いから平気やで?ちゃんと食わなあかんて」
「そ、そういうことじゃなくてっ」
しかし、梶原の言い分など全く聞く耳もたずで高井は控え室へと向かった。

そして・・・。
「梶ー、着替え終わったかー?」
「た、高井さぁん」
「ん?」
「メイク落ちへん」
「ああ、水で落ちないやつでやったんか」
「どうしよう・・・」
「今日はもう仕事ないんやろ?」
「はい・・・」
「せやったら、俺の家に化粧水あったはずやから今から来るか?」
「・・・なんで化粧水なんてあるんですか?」
「前にコントで使った残りや」
「・・・じゃあ、おじゃまします」
「じゃ、早よ行くで。余計な邪魔入ると面倒やしな」
「?」
男・高井、見事に梶原をお持ち帰りである。
結局、今回の勝者は高井だったようだ。

一方、その頃・・・。
「まさか、高井さんに持ってかれるなんて・・・予想外や」
「ま、結局はトシも男やしな」
「理性派きどってるくせに・・・」
「梶ぃぃぃ・・・俺の梶がぁぁぁ」
悔しそうに爪をかむ菅の横で泣きわめく西野。
中川はそんな二人を見て苦笑していた。
そこへ・・・。
「あれ?何してんねん」
今まで姿が見えなかった宇治原が楽屋に入ってきた。
「お前、今までどこおったん?」
「トイレやけど?」
「残念やったなぁ。もう少し早く来てれば」
「え?」
「ええもん見れたのになぁ」
「宇治原さんってそういうタイミング逃すタイプですよね」
さらりと酷いことを言う西野。
「ええもんって何?」
「ま、俺は写メ撮ったからええけど」
「え!?送ってくださいよ!」
「嫌や」
「菅、いつのまに撮ったんや」
「さっきvv」
「なぁ、ええもんって何やねん!」
「菅ちゃん!独り占めはずるいですよ!」
「ずるくて結構や」


結局、宇治原は「ええもん」が何かも教えてもらえなかったとか・・・。

end

コメント
またやってしまいました。
梶総受け!しかも、またもや最後は高梶です。
好きなんですねぇ、私。
では、これより旅に出ます。