<気持ちの行方4>


あの人に会うかもしれへん。

俺は、笑えるんかな。

なぁ、うーちゃん・・・。

俺は今、笑えてる?

「菅、顔色悪いで」
「・・・うん」
「本番まで一時間あるし、寝とくか?」
「ごめん」
「ええよ」

うーちゃん、ほんまごめんな?
そんなに優しいのに、俺はうーちゃんを裏切ってる。

まだ、あの人のことが好きやねん。

今日の収録で一緒に仕事するって聞いて、会いたいという気持ちはますます強くなって・・・。

だから、貴方に名前を呼ばれたことが信じられなくて。

「・・・菅」
「え?」

休む為に楽屋へ行こうとした。
その途中、声をかけられる。

「・・・松口さん」

ああ、ほんま懐かしいな。

懐かしすぎて、好きすぎて、涙も出ぇへんわ。

どうして、名前で呼ばないんやろ。
貴方に会いたくて仕方なかった筈やのに。
もう、昔のようには戻られへんのかな。

だって、今の俺にはうーちゃんがいてるし。

松口さんにだって、きっと恋人がいてる。

「久しぶりやな」
「ほんまですね」

できるかぎり、笑おう。
貴方とのことは、もう何とも思ってないと。

「菅」
「なんですか?」
「何で泣いてんねん」

・・・・え?

「泣くな」

何言うてるんですか?

俺は、泣いてなんか・・・。

「ヒロ・・・」
「ゆ・・・祐樹兄っ」

昔みたいに「ヒロ」って呼んでくれるん?

「ヒロ、俺は・・・」
「祐樹兄・・・好きや」
「ヒロ・・・」

こんなん言うても、迷惑なだけや。
祐樹兄はもう俺だけのものやない。

俺にはうーちゃんがいてるやないか。

「ヒロ・・・」
「ご、ごめんなさい・・・松口さん」
「ヒロ?」
「忘れて、ください・・・」
「・・・」

こんなこと言うても、もう遅いねん。
昔のようには戻られへんねん。

「ヒロ、そんなこと言うなや」
「・・・松口、さん?」

祐樹兄が、俺を強く抱きしめた。
その温もりが懐かしくて、俺も祐樹兄の胸に顔をおしつける。

「祐樹、兄っ・・・」
「ヒロ、好きや」

「俺もっ・・・」

大好きで大好きで、貴方だけしか愛せない。

祐樹兄の腕の中で泣きながら、一瞬だけうーちゃんの顔を思い浮かべる。

俺の気持ちは、何処へ行っていたんやろう。
一度でもうーちゃんの方へ流れていた?

それとも・・・。

「ヒロ・・・ごめんな」
「何で謝るん?謝るんは俺の方やで」
「俺が悪かったんや」
「そんなことっ・・・」
「ヒロ、俺から離れていくな」
「・・・・うん」

貴方の心に俺がいた。
それが嬉しくて、ただ嬉しくて。
俺はまた泣いた。

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コメント
はい、次で終わらせます!
二人が偽物くさい・・・。