<嫉妬深い愛情>



「あれ?宇治原、そこんとこ・・・」
「あ・・・目立ちます?」

高井が自分の頬を指さした。
宇治原は少し恥ずかしそうにしながらその場所を手で隠す。

「別に目立ちはせぇへんけど、どないした?」
「ちょっと」
「菅か?」
「・・・まぁ」

仕方ない、とでも言うかのように苦笑する宇治原に対し、高井は溜息をつく。
そして、宇治原の手を引っ張った。

「高井さん?どこ行くんですか?」
「洗面所や」
「だ、大丈夫ですって」
「冷やしておいた方がええ」
「・・・」

洗面所につくと、高井は持っていたハンカチを濡らし、宇治原の頬を冷やした。

「つめたぁ・・・」
「なぁ、宇治原」
「なんですか?」
「お前、ほんまに菅のこと・・・」
「・・・」
「こんなことされても?」
「別に、しょっちゅうやないですし」
「だけどな」
「これは、そんなんじゃないですから・・」
「・・・そうか」

宇治原は微笑を浮かべ、高井の手をつかむ。

「もう、ええですよ」
「・・・宇治原、俺は・・・お前のこと・・・」
「・・・」

高井が思い詰めたような顔をして宇治原の両肩を掴んだ。
宇治原はその後の言葉を理解したのか、少し困ったような顔をする。

その時。

「宇治!何してんねん!」
「菅っ」

怖い形相をした菅が二人の間に割り込み、宇治原の腕を引っ張った。
それにより宇治原の身体をぐらつき、高井は即座に支えようとするが・・・。

ばしっ!

「さわらんといてっ!」

その高井の手を菅が払う。
当然、支えがなかった宇治原はこけた。

「・・・ったぁ・・・」
「大丈夫か?宇治原」
「はぁ、大丈夫です・・・高井さん、すいません」
「い、いや」

高井に礼を言う、それだけでも菅は許せないとでも言うような顔をしていた。
その人を刺すような視線をあびながら、高井は冷や汗をかく。

「宇治、行くで」
「あ、待てや!じゃあ、お疲れさまでした!」
「あ、ああ・・・」

すたすたと先に行ってしまう菅を慌てて追いかける宇治原。
そんな二人の様子を見ながら、高井は再度ため息をつく。
そして、菅の後ろ姿を睨み付けた。・

「・・・負けへんで」



「菅、ちょお待てって!」
「・・・」
「菅っ」

菅が怒っている。
宇治原はそれを察していた。
その理由も当然わかっている。

「高井さんは俺の頬を冷やしてくれただけやって」
「・・・」
「高井さんとは何でもないし、な?」
「・・・」
「菅ぁ・・・」

その時、菅が振り向いた。
そして、即座に感じる頬の痛み・・・。

口が切れたのか、血の味もした。

「・・・ったぁ」
「血、出たな」
「そうみたい、やな」
「ざまぁみろ」

冷淡な笑みを浮かべ、菅が宇治原にキスをする。
子供のような、乱暴なキスだった。
まるで、玩具を欲しがる子供のような。

「っ・・・ふっ・・・んぅっ・・」
「・・・宇治」
「は、ぁ・・・はぁ・・・」
「お前は俺のもんや」
「・・す、すが」
「俺だけのもんやねん。他の奴になんか渡さない!」

強く、宇治原は菅に抱きしめられた。

「(・・・頬、痛いわ)」

高井の言葉を思いだし、宇治原も菅の背中に手を回す。

「俺には、菅だけやで」

その言葉でこの嫉妬深い恋人が安心するのを知っているから。

「・・・史規、俺から離れて行かんといて」
「行かへんよ」

微笑を浮かべ、宇治原は菅の頭を優しく撫でてやった。


end


コメント
あーあ、絶対に書かないと決めていたのになぁ(言い訳)
書いてしまいました!!すいませんすいませんすいません!
菅宇治です、そして高→宇治?
うわぁ、マイナー!
ありえないなぁ。