<四話・過去>



「雄太、何で出て行ったん?」

「・・・ごめん、功ちゃん」

「俺、帰ってきた時・・・雄太がいないから」

「・・・うん」


功太が悲しそうに梶原を見つめた。


幼い頃に両親を亡くした梶原は従兄弟でもある中山家に引き取られた。

功太とは兄弟同然に育てられていたが、梶原はどうしても家族として受け入れられていないという違和感に苦しみながら過ごしてきたのだ。

ゆえに、高校にあがると同時に今まで世話になっていた家を出る決心をし、自立の道を選んだ。

「合宿から帰ってきたら、雄太おらへんし・・・親は何処に行ったか教えてくれへんし」

「・・・俺が、教えないでって言うた」

「なんで?」

「功ちゃん、怒るやろ?」

「当たり前やん」

「だから、功ちゃんがいない時に出てこうって決めたんや」

「雄太、なんで?」

「・・・俺、あの家にいるの苦しかったんや」

その言葉を聞き、功太が目を見開く。

「なにが?」

「・・・俺だけ、他人やし」

「そんなん・・・・」

「わかってる。せやけど、優しくされるたびに苦しかった」

「・・・」

「それに、いつまでも世話になってるわけにはいかへんやろ?」

「・・・」

「せやから、自立しようって決めたんや」

「・・・雄太、俺といるの辛かったん?」

「そんなことないで?功ちゃんのこと好きやもん」

「・・・」

「ほんま、ごめんな?」

「・・・雄太!」

ふいに、功太が梶原を強く抱きしめた。

「功ちゃん?」

「雄太、ごめん・・・雄太の気持ちに気づいてやれんで・・・」

「そんな、功ちゃんが謝ることやないよ」

「雄太・・・でもな、俺は雄太と一緒にいたいねん」

「・・・え?」

「俺、雄太が何処に行ったか必死に探して・・・やっとここまで来れたんや」

「・・・」

「あんな・・・俺、雄太の高校に転校するんや」

「え!?」



「えぇぇぇぇぇぇ!!?」

「西野、うるさい」

功太の発言に西野が叫ぶ。

「っていうか、すっかり俺らの存在忘れられた?」

「せやな」

「菅さん、宇治原さん!何でそんなに冷静なんですか!!」

「お前が慌てすぎなんや」

「せやかて、梶が!」

「たかがガキ一人増えただけやん」

「俺らの敵やないわ」

かなり余裕ぶっこいている宇治原と菅。

しかし、それを聞いた功太がにやりと笑う。

「雄太、部屋見つかるまお前の部屋に泊まってもええ?」

「ええよ!」

『なにぃぃ!!!?』

流石にこれには声をハモらせる宇治原と菅。

そんな二人を勝ち誇ったかのように見やる功太。

一方、梶原は何が何だかわかっていない様子で。


波乱の幕開けであった。


「青春やなぁ」

「中川、余裕やな」

「んー?まだまだ青いやん?あんなの」

「・・・」

のんびりとそう言ってのける中川を横目に、高井に何とも形容しがたに気持ちになっていた。

「・・・お前、ただ者やないわ。おかしいのは知ってるけど」

「今さらやろ?」


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コメント

どうなるどうなる?

梶受けは楽しいなー。

あははははは!