<空腹感情論>



コイツは・・・いきなり俺の家に来て、何してんねん。


「祐樹ー」

「今忙しい」

「なぁ、祐樹ー」

「・・・」

HP作業をしている俺の背後で図体のでかい男がひたすら騒いでいるが、俺もひたすら無視を続けてる。

つうか、何でオフに俺の家来んねん。

奥さんと子供が実家帰ってんのは知ってるけど、俺の家に来ることないやろ。

「祐樹ー」

「・・・」

「祐樹ってば」

ああ、うるさい。

「・・・なんやねん」

不機嫌そうに睨み付けると、この図体のでかい男は嬉しそうに目を輝かせた。

「お腹空いた」

「何か買ってくればええやろ」

「金ない」

「じゃあ我慢せぇや」

「祐樹、何か作って」

「嫌や」

「何でよっ!なぁ、作ってやー」

「めんどくさい」

「簡単なのでええから」

「・・・」

俺は相変わらずコイツには甘いらしい。

パソコンを終わらして台所へ向かうと、大上がニコニコ笑っているのがわかった。

「簡単なのしか作らへんからな」

「おうっ」

・・・何作ろ。




しばらくして、出来上がったのはあり合わせの物で作ったホットケーキ。

調度、ホットケーキ用の粉があったから良かったものの・・・。

何でこんなもんが俺の家にあんねん。

「ほら、出来たで」

「ありがとなーvv」

「早く食え、冷めるで」

「いただきまーすっ」

お前はガキか。

ホットケーキごときで喜びやがって。

「うまいっ!」

「当たり前や」

「ほんま美味しいで!そういえば・・・」

「あ?」

「祐樹、前も作ってくれたよな」

「・・・」

「俺がホットケーキ食べたいって言うて・・・」

ああ、そういえば・・・。

あのホットケーキの粉は、コイツが持ってきたものやった。

あれは、あの時の余りか。

「あの時のホットケーキもうまかったでっ」

「説明通りに作ってるんやから普通やろ」

「いや!祐樹が作るからうまいんやって!」

「・・・あ、そ」

胸が鳴った。

何で、そんなこと言うねん。

「ご馳走様でした」

「大上」

「ん?」

「帰れ」

「何で?片付けてへんよ?」

「ええから、今日は帰れ」

「えー?もう少し祐樹といたい」

「いいから、帰れ」

「・・・わかった。帰るわ」

何で、そんな顔してんねん。

泣きそうな顔しやがって、泣きたいのは俺の方やぞ。

祐樹といたい、とか。

そんな台詞はいらんねん。

期待させるようなことばっか言うな。

お前は何気なく言うてるだけかもしれへんけど、俺にとっては重すぎる言葉や。

「・・・じゃあな」

大上の後ろ姿が何だかしょぼくれている。

なぁ、何で俺の家に来たん?

「大上」

「・・・・ん?」

「お前・・・」

なぁ、言うてもええ?

「お前さ・・・」

なぁ、お前はいつも腹空かせてるけど。

ほんまは、俺の方が空っぽやねん。

お前がいなくなって、お前が俺じゃない人のものになって。

俺はいつでも空っぽや。

忘れようとか思っても、お前はいつでも俺の中に入り込んでくるから。

「その・・・」

忘れようなんて、無理な話や。

「俺のこと・・・」

なぁ、言うてもええ?


俺のこと、まだ愛してる?


end



コメント

最近、切ない松口→大上を書くのが好きです。

でも、大上さんは天然なのでね。

無意識でこういうことを言うのではないかと。

罪作りだなー。