<五話・旅行へGO!>



中川家、唯一の自家用車であるワゴン(8人乗り)で旅行へと出かけた8人。

当然、誰が雄太の隣に座るかもめたわけだが・・・。

「俺は雄太の隣がええ」

「あ、それなら俺も雄太の隣がええわ」

「雄太は乗り物酔いするから俺が隣に座るわ」

「何言うてんねん。それやったら長男である俺が・・・」

「俺も雄太の隣に座りたいっ」

ちなみに、上から広文、史規、俊彦、貴志、亮廣の台詞である。

「・・・俺、誰の隣でもええよ」

溜息をつきながら雄太が呟くと、福田が雄太の頭を撫でた。

「雄太くん、乗り物弱いん?」

「はい」

「せやったら僕の隣に来る?」

「でも・・・」

「福の隣は俺やーーー!!!」

「徳井くんのことは無視してええから」


結局、運転は徳井となり(福田の命令)。

助手席に宇治原(徳井の暴走止め役)、真ん中の座席に雄太。

そして、雄太の両隣に福田と俊彦が座り・・・後部座席に貴志、広文、亮廣が座ることとなった。

「雄太、気分悪くなったらすぐに言うんやぞ?」

「うん」

「一応、薬飲んでおいた方がええんちゃうかな」


「徳井、ちゃんと前見て運転せぇや!」

「何が悲しくて隣にこんな不細工・・・」

「誰が不細工やねん!!」


「あー、雄太が隣やないんやったら寝るわ」

「広兄!俺の帽子ふんでる!」

「俺も寝よかなぁ」


そんなこんなで無事(雄太が乗り物酔いすることもなく)、温泉旅館についた8人でありました。


「温泉なんて初めてやから嬉しいわーvv」

「あれ?雄太は初めてやったっけ?」

「小さい頃に来たことあんで」

「まだ親父たちが生きてる頃にな」

「嘘!覚えてへんよ!」

「雄太は小さかったからなぁ」

「たぁ兄、俺らが泊まる宿って何処?」

「あー・・・あれ」

広文の言葉に貴志が指さしたのは一見、何処にでもあるような普通の旅館であった。

一般家庭に生まれた兄弟たちが豪華な旅館を選ぶはずもなく。

というか、家計簿をつけている俊彦の意見。

「あれなん?なんか普通やな」

「しゃあないやろ。でも、景色と露店風呂は最高らしいで」


確かに、内装は普通の旅館ではあったが。

8人が部屋に入ると・・・。

窓からは綺麗な庭と山が見えていた。

「うわぁ、綺麗やなーvv」

「やっぱ山やと涼しいわー」

「あとで散歩しよな、福」

「徳井くん一人で行っておいでよ」

「なんでや!」

ちなみに、部屋は一つ。

男8人で一つの部屋を使うのかと思えば、かなりムサい気はするとは思うが気にしないように。

「俺、温泉入りたいわ」

「じゃあ、先に温泉行くかー」

「風呂入ったら飯や飯」


温泉に入り、美味しい料理を堪能する兄弟たち。

そして、夜は当然・・・。

「怪談やろ!!」

「な、なんで?広兄・・・」

「あれー?雄太、怖いんや?」

「そ、そんなこと・・・」

「怖いんやろ」

「広、あんまり雄太のことイジメたらあかんで」

「福ーvv怖かったら抱きついてええからな?」

「別に怖くないけど」

部屋の明かりを消し、史規が懐中電灯をつけると・・・。

「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!」

雄太がもの凄い叫び声をあげた。

「うわぁ・・・すご・・」

「こわっ!」

「化け物や」

「いや、骸骨やろ」

「雄太くん、大丈夫?」

「不細工もここまで来ると救いようないな」

散々な言われようである。

しかし、ここまで言われて黙っているのも悔しい。

「失礼すぎるぞ、お前ら!!」

懐中電灯をつけた史規が怒鳴った。

その顔はライトに照らされ、まさに骸骨のように見えて怖い。

「雄太が怖がってるやん」

「雄太?大丈夫やでー?」

「・・・うっ・・・史兄・・・怖いぃぃぃ」

「そ、そんな・・・」

愛する弟に嫌われ、史規は本気でショックを受けていた。

結局、雄太が泣き出してしまったので怪談は中止。

史規は雄太に近づくこと厳禁命令を下されてしまったそうな。

そ・し・て・就寝時間になると・・・。

「・・・何で雄太の隣がたぁ兄なん!?」

広文があきらかに不満そうな声をあげた。

「しゃあないやん。雄太がたぁ兄の隣がええ言うてるんやし」

こういう時、一番安心する人の隣がいいものです。

「そんで、何で亮廣も隣やねん!!」

「ジャンケンで勝ったからやろ」

「弟のくせに生意気やー!」

「いったぁ!何で蹴んねん!!」

「うるさい!早く寝ろ!」

「つうか、雄太が起きるから静かにせぇよ」

貴志の隣で静かに寝息をたてる雄太。

その笑顔はまさに天使のよう・・・(だと兄弟たちは思っている)

なんだかんだで楽しめた旅行ではあったらしい。


そして、この二人はというと。

「福、寝た?」

「んー?」

「外行かへん?」

「なんでよ。僕、眠い」

「せやかて二人きりになりたい・・・」

「・・・しゃあないなぁ」

「やった☆」

旅行に来て、ようやく福田と二人きりになれた徳井でありました。


end


コメント

旅行の模様はあまり作りたくなかった。

そういうわけで終わりです。

というか、怪談で宇治原さんを骸骨と言わせたいが為に書いたんです。

次はどうしようかな。