<花焔>



慶に新しい王が誕生した。

意思の強そうな碧色の瞳と燃えるような赤い髪を持つ女王。

その字は赤子。

名を陽子。



誰よりも早く。

主よりも早く。

その麒麟よりも早く。

俺は彼女に会っていた。


初めて陽子を見た時は、血のような髪だと思った。

だけど、どうして気づかなかったのか。

あの髪は血の色などではなく、あれは炎の色なのだと。

あの瞳はこんなにも強い輝きを秘めていたというのに。


「今度はこの女が慶を滅ぼすのか」なんて、どうして思ったのか。

お前はこんなにも国を思いやる心を持ち、こんなにも民のことを大事にしているのに。


「延麒、どうされました?」

「んー・・・いや」

「お腹でも空かれましたか?」

クスクスと俺をからかうように笑う赤い髪の人。

子供扱いなのが悔しい。

俺は、お前よりも年上なんだけど?

「違う」

「・・・?」

山積みになった書類に判子を押していく陽子。

ちゃんと毎日、仕事して・・・。

俺の主とは大違いだ。

俺は、そんな努力家な陽子のことが好きだ。

剣をふるう陽子も、仕事をしている陽子も、普通の女の子のように笑う陽子も。

「俺は好きだ」

「え?」

「陽子」

「なに?」

もし、この人が俺の主だったなら。

俺はこの人の為に何でもするだろう。

この美しい女王の為だけに・・・。

「・・・何でもない」

「そうですか」


麒麟が仁義と情けの生き物なんて誰が言ったのか。

俺は、こんなにも欲深い奴なのに。

お前を独り占めしたいなんて。

「・・・麒麟失格だな」

「六太くんが?そんなことないよ」

「・・・」

「貴方は麒麟としての使命を果たしている」

「・・・そうかな」

「そうだよ」

ニッコリと、俺の好きな笑顔を見せてくれた。

その笑顔に思わず顔が熱くなる。

「六太くん、熱いの?」

「え、い、いや・・・」

「顔、赤い」

「・・・////」

「待ってて、冷たい物でも・・・」

「よ、陽子!」

「え?」

呼び止めて腕を引っ張った。

バランスを崩して倒れそうになる彼女を支え、桃色の唇に自分のそれを重ね合わせる。

「!?////」

「・・・っと」

一瞬だけの口づけだけど、陽子は理解してくれたようだ。

「ろ・・・ろろろ・・・六太くん?////」

「陽子、熱い?」

「え?」

「顔が赤い」

「あ・・・これは・・・////」

「じゃ、俺はそろそろ帰るから」

「え?」

「そろそろ、アイツに仕事させなきゃいけないからさ」

「そ、そうですか」

窓枠に足をかけて、ふと振り返る。

「・・・っ」

少し残念そうな顔をした陽子がそこにいた。

「陽子、また来る」

「・・・待ってる」

それだけで、今は満たされる。



華のように美しく、焔のように勇ましく。

何百年か先、民は彼女を「華焔の女王」と呼ぶのだろうか。


「・・・さぁて、アイツを探しに行くかぁ!」



end


コメント

あー・・・やっちまった。

六太×陽子。陽子、好きだー!

これはノーマルじゃないと読めないです。

一番好きなのは六陽と利陽。楽陽も嫌いじゃあない。

新刊、出ないかなぁ。