<秋祭り>



徳井くんに誘われるがままに来た秋祭り。

せっかくだからと浴衣まで着て、徳井くんは本当に嬉しそう。

「福!福!射的やろう!」

「僕はええから徳井くんやりなよ」

「じゃあ、福のためになんか取ったるわっ」

本当、子供みたいにはしゃぐ徳井くん。

まるで、子供の頃に戻ったみたいやね。

「福!取ったで!」

「なに?」

「福にやるわっ」

満足そうな笑みを浮かべて徳井くんが僕に玩具つきのお菓子の箱を渡してきた。

「懐かしいわー。小さい頃はよく買ったな」

「せやね」

「・・・福、リンゴ飴食べへん?」

「うん」

「福、金魚すくいやろ?」

「うん」

「・・・福、何で何も言わへんねん」

「え?」

「さっきから俺ばっかりやん。楽しくない?」

「そんなことないで?楽しいよ」

「買いたい物とかあったら言うてや?」

「うん」

別に何もいらないんよ。

徳井くんといれるだけで楽しいし、僕はそれだけで満足や。

ただね、秋祭りって切ない気分になるんよ。

夏祭りみたいに元気よくはしゃぐ気分にはならへんねん。

「・・・・・あ」

「ん?どうした?」

「お面・・・売ってる」

「欲しい?」

「・・・欲しい」

「じゃあ、買うたるわっ」

「ええの?」

「ええよ」

「・・・ありがとう////」

徳井くんがお面屋さんに駆けていく。

そういえば、前もこんなことあったよね。

僕は徳井くんより足が遅いから、いつも置いていかれんねん。

「福、何がええ?」

「・・・徳井くん」

「ん?」

「おいていかないで?」

「あ・・・ごめんな」

「もっと、ゆっくり歩いてほしい」

「ごめん」

前も、べそかきながら僕が言って。

徳井くんが謝って。

君は僕にお面を買うてくれて。

そして、僕の手を強く握って言うねん。

「離さへんから」

「・・・うん」

徳井くんが買うてくれたキャラクターのお面をつけて、僕は泣きそうになるのを隠す。

「やっぱり、秋祭りは切ないわ」

「せやな」

絶対に、この手を離さないで。

end


コメント

どうも秋は病んでしまう季節らしい。

切ない系か暗い系しか書けない。

でもこれは気に入っている作品。