<番外編・小さい雄太くんの物語・亮廣ver>
オカンと親父が死んで、俺らは兄弟だけで暮らすことになったんや。
オカンと親父がいてないのは寂しいけど、いないもんはしゃあないねん。
いつまでも悲しんでたらオカンと親父が浮かばれないって、俊兄も言うてたしな。
それに、叔父さんが後見人になってくれたから、生活に困ることはないってたぁ兄は言うてた。
でも、俺はかなり困ってる。
それは、末っ子の雄太のことやねん。
雄太は3歳やから、オカンと親父が死んだことなんてわからへんみたいやけど・・・。
オカンがいないから、雄太の世話は俺が見なあかんねん。
キーンコーンカーンコーン・・・。
「亮廣ー!学校帰りに駄菓子屋行こうやー」
下校準備をしている亮廣に声がかかった。
振り返ると、そこにいたのは幼なじみである功太が。
「駄菓子屋?」
「駄菓子屋の兄ちゃんがな、おまけしてくれるねんて」
「おまけ・・・」
「飴ちゃんくれるらしいで」
「・・・ごめん、功太」
「今日もあかんの?」
「保育園に雄太を迎えに行かなあかんねん」
「またかい。付き合い悪いなー」
「しゃあないやろ。オカンがいないんやから」
「兄ちゃんたちがいるやん」
「たぁ兄は中学生やから忙しいねん。俊兄は飯作らなあかんし」
「四年生の双子は?」
「・・・広兄に頼むなんてできひん」
「ああ・・・怖いもんな」
「史兄は勉強で忙しいねん」
「ふーん」
「俺しかいないやろ」
「大変やな」
「まぁなー」
「でも、お前の弟かわええやん」
「・・・じゃ、俺行くわ」
「おう、頑張りやー」
功太に手を振り、亮廣は溜息をつきながら保育園へと向かう。
「雄太ー、迎えに来たでー」
保育園は小さい子供でごったがえしにかっている。
正直、亮廣はここに来るのがイヤだった。
まぁ、小学一年生くらいになると保育園の子供が妙にガキくさくなるものである。
そんな亮廣を見つけ、嬉しそうに駆け寄ってくる可愛い男の子が一人・・・雄太である。
「あ!あきちゃーん!」
「あきちゃん、やないやろ?ちゃんと兄ちゃん言えや」
「あきちゃん!」
「・・・まぁ、ええわ・・・帰るで」
「うーんvv」
ニコニコと可愛らしい笑顔を浮かべながら亮廣の手を掴む。
しかし、亮廣は冷たくも雄太の手を払った。
「あきちゃん?」
「・・・早よ帰るで」
「うんっ」
家に帰るためには商店街を通らなければならない。
何故なら、両親の経営していた喫茶店は商店街を過ぎた場所にあるからだ。
家はその喫茶店の裏にある。
しかし、まだ好奇心たっぷりな3歳児が商店街の魅力に誘われないはずがなく・・・。
雄太は亮廣のあとを追いかけながらも、あっちを見たり、そっちを見たりと、首を忙しく動かしていた。
その時、雄太の目にとても魅力的な駄菓子屋が飛び込んでくる。
「あーっvv」
そして、亮廣から離れてしまい・・・。
「・・・・・・・あれ?雄太?」
亮廣が気づいた時には何処にもいなかった。
「雄太っ!」
亮廣は急いで雄太の名前を呼ぶが、返事が返ってくるはずもなく。
焦りと不安を抱えたまま、亮廣は走り出した。
「・・・っ・・・もし、事故にでもあったら・・・!!」
亮廣の脳裏に両親の最期の姿を思い浮かぶ。
「・・・雄太!!」
その時。
「須知の兄ちゃん、これいくら?」
「それは10円」
「まけてやー」
「それ以上安くしたら店が潰れてまうわっ」
駄菓子屋に一人で来た功太は店番をしている須知に値引きの交渉を申し出ていた。
「別にそんなんで潰れへんって」
「阿呆・・・・ん?」
「どないしたん?」
「いやー・・・あそこにいる小さいの」
「あれ?亮廣の弟やん」
「じゃあ、あれが中川の末っ子かい。えらい可愛らしい子やなー」
「せやけど、何でここにおんねんやろ」
雄太を見つけた功太を買ったばかりの棒つき飴を舐めながら、雄太に声をかける。
「雄太」
「・・・だれー?」
「俺な、亮廣の友達やねん」
「あきちゃんの?」
「功太いうねんで」
「こうちゃん?」
「そっ。あっちは、須知の兄ちゃん」
「・・・すっちゃん?」
「ところで、亮廣はどうしたん?」
「あきちゃん?・・・あれ?」
雄太は初めて亮廣がいないことに気づいたらしく、きょろきょろとあたりを見回した。
「・・・あきちゃんは?」
「俺が聞いてるんやけど」
「・・・ふっ・・・うー・・・あ・・きちゃ・・・」
「え!?ちょ、何で泣くん!?」
「あかんで、功太。小さい子泣かしてー」
「ちゃうって!」
「ほら、飴あげるから泣きやんでや」
亮廣がいないことに不安を感じたのか、雄太は声をあげて泣き出す。
そんな雄太を、必死に宥めようとする功太と須知。
飴をあげても雄太の涙は止まらない。
「あきちゃ・・・ひっく・・・うー・・・」
「どないしよー・・・」
「うーん・・・」
すっかり困りきってしまった二人。
そこへ・・・。
「雄太っ!!」
「あ、亮廣」
「う・・・あきちゃん!!」
息をきらしながらも雄太に走り寄る亮廣。
雄太も嬉しそうに亮廣に駆け寄った。
しかし、亮廣はそんな雄太に向かって大声で怒鳴りつける。
「お前、離れたらあかんやろ!」
「ご、ごめんなさぃ」
「面倒かけさせんなや!」
「ふぇ・・・ごめんなさぃ・・・」
「はぁ・・・。帰るで」
「・・・あき、ちゃ・・・」
涙で顔をぐちゃぐちゃにしながらも雄太は亮廣に手を伸ばそうとするが、亮廣は雄太を見向きもしない。
「功太、須知の兄ちゃん、ごめんな」
「別にええけど・・・」
「亮廣、言い方きついで。まだ三歳なんやろ?」
「これくらい言わんとわからへんねん」
「そうかー?」
「でも、まだ小さいんやし。もう少し優しくしてやらんとあかんで?兄ちゃんなんやから」
「・・・」
「ひっ・・・く・・・ふっ・・・」
その帰り道、いまだ泣きじゃくっている雄太を見向きもせずに歩く亮廣。
「あきちゃ・・・・ごめ、なさ・・」
「・・・雄太」
しばらく歩いたところで、亮廣は雄太の方を振り返った。
「あきちゃん・・・」
「雄太、お前はわからへんかもしれへんけど」
「・・・?」
「オカンと親父がいないから、みんな大変なんやで」
「・・・」
「俺もお前の世話しなあかんから、友達と遊べへんし」
「・・・あきちゃん」
「せやから、あんまり迷惑かけんな」
「ごめんなさい・・・」
「・・・お前はガキやから、どうせわからへんやろ」
「・・・・・・・ゆうた、おかあさんとおとうさんにあえへんのしってるで」
「え?」
「おかあさんとおとうさん、てんごくいったんやろ?」
突然の言葉に、亮廣は驚いて雄太を見つめた。
「でもな、ゆうた・・・」
「・・・」
「あきちゃんやみんながいるから、さびしくないで」
「・・・」
「ごめんなさい、あきにいちゃん」
「雄太・・・」
涙をぽろぽろとこぼす雄太を黙って見下ろす亮廣。
そんな亮廣の服の裾をつかみ、雄太は泣きじゃくる。
「あきにいちゃん・・・ごめんなさい」
「雄太・・・俺も、ごめんな」
13年後。
「あれー?亮兄、何見てんのー?」
「んー?雄太の保育園の頃の写真」
「なっ////そんなん捨ててや!」
「あかんってー」
「・・・っ////」
「そういえば、この頃の俺って雄太に冷たかったよな」
「え?そうなん?」
「そうやで。でも、お前があきちゃんあきちゃん言うてついて来るから・・・」
「嘘やーっ////」
「ほんまやって。それで、俺もお前にはまってもうて・・・」
ニコニコとしまりのない笑みを浮かべ、亮廣は雄太を抱きしめた。
「あ・・・亮兄?」
「俺の可愛い弟やしなvv」
「・・・////」
end
コメント
亮廣は雄太が疎ましい存在だと思ってたんです。
でも、今はかなりのブラコン。
さて、次は誰にしよーかなー。
ちなみに・・・功太の性格は適当。