<番外編・小さい雄太の物語・広文あんど史規ver>
「史、広、悪いけど・・・」
『え?』
事の発端は、たぁ兄の一言やった。
広文ver
「今日、学校が終わったら雄太のこと迎えに行ってくれへんか?」
「・・・亮廣がおるやん」
「アイツ、熱出してもうてん。今日は休ませるわ」
「えぇー?」
「馬鹿は風邪ひかないはずやん」
「なっ?頼むわ」
『・・・わかった』
「じゃあ、朝の送りもよろしくなっ」
「え!たぁ兄がすればええやん!」
「保育園と中学は方向が逆なんやから無理やわ。俊は委員会で早うに家出てもうたしな」
「・・・」
「そういうわけやから、頼んだで!?」
「・・・」
何で俺らがガキの手引いて歩かなあかんねん!
亮廣も亮廣や!
何でこんな時期に風邪ひいてんねん!
治ったらシバいたるっ。
「ひろにぃ?ふみにぃ?」
「・・・」
下を向けば、いつのまに来たのか末っ子の雄太が俺の足にへばりついていた。
ニコニコとガキ特有の可愛らしい笑顔を浮かべながら・・・。
「・・・え?」
可愛らしいって何やねん!
いや、確かに顔は可愛いけどな。俺の弟やし!
「・・・」
そういえば・・・オカンと親父が死んでから、雄太の顔見るの久しぶりのような気するわ。
つうか、あんまりコイツと遊んでやった覚えもないしな。
いつも、たぁ兄か俊兄が雄太の面倒みとったし・・・。
「ひろにぃ?」
そんなことを考えていた俺の顔を不思議そうに覗き込んでくる雄太。
俺はそんな雄太の片方の手を掴んだ。
「行くで、雄太」
「うんっ!」
自分の手から雄太のあったかい体温が伝わってくるのがわかる。
ガキ特有の手やな。
ぷにぷにと弾力があって気持ちいい。
「雄太、今日は俺らが迎えに行くから」
「ひろにぃとふみにぃが?」
「そう」
「・・・あきちゃんはー?」
「風邪ひいたから今日は休み」
「びょうきなん?」
「そう」
「・・・あきちゃ・・・かわいそう・・・」
「雄太?」
史規ver
「どうしたんや」
いきなり立ち止まってしたを向いてしまう雄太。
その目には涙が溢れていた。
いきなりの事に広はガラにもなく焦っている。
「だ、大丈夫やって!すぐ治るからなっ」
「寝とけば平気やろ」
「おとうさんとおかあさんみたいにいなくならない?」
『・・・え?』
「あきちゃ・・・いなくならない?」
「・・・」
俺らの顔を見つめながら必死にそう言う雄太に、胸が痛んだ。
こんなガキやのに、雄太はオカンと親父がどうなったかを理解してんねや。
「雄太、亮廣はいなくなったりせぇへんで」
「ほんと?ふみにぃ」
「ほんまやって。俺が許さへんし」
「ひろにぃが?」
「そう。だから泣くな?」
「うんっ」
小さい手で目を懸命にこする雄太。
涙のせいで大きな目がウサギみたいになってる。
「雄太、あんまりこするな」
「ゆうた、なかへんで」
「偉いな」
そう言って頭を撫でてやると、雄太はニッコリと微笑んだ。
その笑みに、思わず胸が鳴る。
「・・・って、今の何や!」
「ひろにぃ?」
「何で一人ツッコミしてんねん。勉強しすぎて狂ったか?」
・・・双子のくせに言うことキツすぐや。
「あ・・・な、何でもないで。早く行こか」
「うんっ」
手を強く握ってやると、雄太のあたたかい体温が伝わってきた。
俺らは今まで、雄太の世話なんて一つもしてこなかったんや。
だから、雄太のあたたかさも強さも優しさも何も知らへん。
それを今更になってものすごく後悔している。
「雄太、これから送り迎えは俺らがしたるわ」
「あきちゃんはー?」
「アイツはええねん」
end
おまけ
「亮廣、明日から雄太の面倒は俺らが見るわ」
「何でやねん!それは俺の役目やで!」
「ええからお前は友達とでも遊べ。兄命令や」
「・・・何かあったん?今までそんなん言うたことないやんか」
「別に?可愛い雄太のためやしなー」
「せやな。雄太のためや」
コメント
はい、広兄も史兄も堕ちました。
今回は短め・・・。
次は俊兄です。