<最期の魔法>



シンデレラの魔法は12時で終わってしまうけれど。

じゃあ、俺とお前の魔法は何時まで許される?




「西野!次はあれ乗ろうや!!」

「はいはい」

「その次はあれな!」


まるで子供のようにはしゃぐ梶の背中を追いかける。

久しぶりのオフやから、梶が前々から俺と行きたいと言っていた遊園地に二人で来た。

梶はすごく楽しそうに無邪気に笑って俺を呼ぶ。

俺も、そんな梶が可愛くて愛しくて仕方がないから、微笑んで梶の後を追いかていく。

どこまでも、どこまでも、梶の行く所にならどこまでもついて行きたいと思う。

俺は梶が好きで好きで、梶も俺のことを好きでいてくれるから。

「西野、どうしたん?」

「え?」

「疲れた?」

心配そうに俺の顔を覗き込んでくる梶。

俺はそんな梶に笑いかけた。

「ちゃうで。ちょっと考えごと」

「何考えてたん?」

「梶は可愛いなーって」

「あ、阿呆////」


お前と、いつまでもいつまでも一緒にいたい。

お前の行く所なら、どこまでもどこまでも追いかけていきたい。

そんな思いからか、自然と手を伸ばした。


せやけど、手は梶まで届かない。


「西野・・・」

「・・・梶」


梶の顔が悲しそうに歪む。


そんな顔すんな。


「梶、次は何に乗りたい?」

「・・・西野」

「メリーゴーランドでも乗るか?」

「西野」

「お姫さま抱っこしたるで?」

「・・・西野」


そんな顔すんな。


お前がそんな顔したら、魔法が解けてまうやろ。


「梶・・・」

手は届かない。

ただ宙をきるだけで、手は梶まで届かない。

泣きそうになっている梶を抱きしめることもできない。

キスすることも、触れることさえも、俺には許されない。

「・・・梶」

お前とならどこまでも行けると信じてた。

お前となら何でもできると信じてた。

お前の為なら、どこまでも追いかけてみせると。

「西野・・・もう、ええよ」

「・・・梶、そんなこと言うな」

ただ、信じてた。


お前と俺の魔法は、いつまで許される?



俺は、結局・・・何もしてやれない。



「西野、忘れて?」

「嫌や」

「俺のこと忘れて・・・進んでほしい」

「お前がいないのに、進めるわけないやろ」

「俺がいなくても、お前は大丈夫やから」


梶の言葉が、魔法が解け始めていることを俺に伝える。




お前がいないことに耐えられなくて。

現実を受けとめたくなかった。




「ごめん・・・梶」

お前との約束を果たせなくて。

お前に何もしれやれなくて。


「謝るのは俺やで?ごめんな、西野」

「梶は悪くない・・・」

「俺が悪いから・・・西野は悪くないから」

「・・・っ・・・」



時間が、迫ってきている。



「西野、大好き」

「俺も・・・梶のこと一番大好きや」

「愛してる」

「俺も梶のこと愛してるで」




遊園地の中心にある大きな時計が、時間を知らせる鐘を鳴らした。


そして、魔法は解ける。



「・・・っ・・・」



そこに、梶の姿は何処にもなかった。



一日だけ許された俺と梶の魔法。

離れたくなかった。

一緒にいたかった。


ずっと、二人でいたかった。



いつまでも、いつまでも。

ただ、それだけ。



魔法は解けて、俺は一人・・・現実に戻される。



end



コメント

うわ、何これ。

久しぶりのアップがこれか!

えーと、梶は何かで死んでしまい・・・お別れを言うために一日だけ西野の所に来たのです。

西野はそれを受け入れたくなくて・・・悲しい(なら書くな!)