<無自覚天然恋人>
「山崎ー!飲みに行くぞー!!」
「はいっ!」
某番組終了後、有田はいつものように後輩であり親友でもある山崎を飲みに誘った。
この二人の仲のよさを知らない者は、芸人の中ではそういない。
それは上田もよく知っているし、有田にとって山崎が親友以上の対象ではないことも理解している。
だが、ここまで毎日のように放っておかれると我慢にも限界があるというもの。
・・・つまり、上田と有田は付き合っている。
上田はこみ上げる苛立ちを何とか抑え、有田に声をかけた。
「有田」
「何だよ、上田」
「お前、今日は俺に付き合え」
「え?何で?」
「いいから」
「でも、山崎が・・・」
「山崎、いいよな?」
上田はキラリと目を光らせ、山崎を睨みつけた。
その人をも殺しかねない眼光の鋭さに、山崎の顔が一気に青ざめる。
「は、はいっ!有田さん、今日はやめておきましょうっ」
「えぇぇ?何でだよー」
「よし。行くぞ、有田」
「えー?」
納得がいかない、とでも言うような顔をしている有田の腕を引っ張り、上田はその場を去る。
そんな二人の後ろ姿を見送りながら、山崎を身震いをせざるをえなかった。
上田は有田をスタジオの近くにある公園まで連れていった。
現在の時刻は深夜零時。
もはや人の姿はない。
「なんだよ、上田」
「・・・お前、わかってんのか?」
「何がだよ」
「お前と付き合ってるのは俺だろ」
「そうだろ?」
「じゃあ、何で毎日毎日・・・」
「?」
わけがわからず首を傾げる有田。
そんな有田を見て、上田は溜息をついた。
「お前・・・天然なのか馬鹿なのか確信犯なのか」
「なっ!なんだよ、それ!!」
「もう、いい」
鈍い有田に遠回しな言い方は通用しない、と悟った上田は有田を強く抱きしめる。
「え・・ちょっ・・・」
「放っておくなよ」
「・・・上田?」
「お前と付き合ってんのは俺だろ?」
「・・・うん」
「お前の彼氏は俺だろ?」
「・・・うん」
「じゃあ、少しは考えてくれ」
「・・・ごめん」
上田の言いたいことをようやく理解したのか、有田は上田の洋服を掴んだ。
「お前が山崎と仲いいのはわかってるけど、たまには俺のこともかまえよ」
「・・・上田、寂しかったのか?」
「・・・ああ」
「そっか・・・ごめんなっ」
ニッコリと無邪気に微笑み、有田は上田の背中に手を回す。
それが少し気に入らないのか、上田は有田の頭を小突いた。
「何で嬉しそうなんだよっ」
「だって、上田は俺のことが大好きってことだろ?」
「・・・お前」
「違うのか?」
「・・・・そうだよ」
「やっぱりなっ」
「でも、お前も俺のことかなり好きだろ?」
突然の言葉に、有田の顔が赤く染まる。
「なっ・・・////」
「どうなんだよ」
「・・・す、好きだけど・・・」
「だけどはいらない」
「好きだよっ!悪いか!!////」
「悪いなんて言ってないだろ。お前ってマジで馬鹿な」
「う、うるさいっ」
恥ずかしさの限界を越えたのか、有田は上田に背を向けてしまう。
「有田」
「な、なんだよ・・・」
「好きだぜ」
「・・・おう////」
耳まで赤くなってしまった有田を後ろから抱きしめ、上田は小さく微笑んだ。
end
コメント
キリリク以外では初だなぁ。
上有のつもり・・・。