<捨て猫>
それは、珍しく二人のオフが重なった日のこと。
松口は井戸田を誘って街へと出かけた。
その帰り道・・・。
「今日はありがとうございましたっ」
「おう」
「楽しかったですねvv」
「まぁな」
「・・・松口さんの家に行ってもいいですか?///」
「ええで」
松口の言葉は少ないが、井戸田は満足そうな笑みを浮かべる。
と、その時。
井戸田の耳に小さな猫の鳴き声が聞こえてきた。
「あれ?」
「どないした」
「猫の鳴き声が・・・あ、あそこだっ」
「井戸田?」
井戸田が見つけたのは生まれて間もない子猫が入ったダンボール。
そのダンボールには一枚の紙が貼られてある。
「今時、捨て猫か」
「みたいです・・・可哀想。まだこんなに小さいのに」
井戸田がその子猫を抱き上げると、人の体温が心地よいのか子猫はゴロゴロと喉を鳴らした。
「可愛いですねっ」
「せやな」
「あ、女の子だ」
「どこ見てんねん・・・」
子猫と触れ合う恋人の姿はなかなか微笑ましい光景となっている。
しかし、松口はとても嫌な予感がした。
「お前・・・まさか連れて帰る気やないやろな」
「・・・うちのアパートはペット禁止なんです」
この言葉に松口の中にある嫌な予感はますます強まる。
「松口さんの所はペット大丈夫でしたよね?」
「・・・だったら何や」
「飼ってあげてください」
「お断りや」
嫌な予感は的中した。
笑顔で子猫を差し出してくる井戸田に少しときめきながらも、松口は冷たくあしらう。
「何でですかっ!こんなに可愛いのに」
「可愛いだけで猫なんか飼えるか」
「こんな寒いのに・・・放っておいたら死んじゃいますよ!」
「・・・俺はこれ以上ペットはいらへん」
「え?松口さん、ペットなんて飼ってない・・・」
「お前やお前」
「なっ!俺は松口さんのペットじゃありません!!」
ペット扱いされたことに腹を立てたのか、井戸田は松口を怒鳴りつけた。
「あんまり大きい声だすな。近所迷惑やろ」
「・・・松口さんの馬鹿」
子猫を抱きしめたまま、井戸田が小さく呟く。
その大きな目からは涙が溢れ出そうになっていた。
「・・・・はぁ」
そんな井戸田を見て、松口が溜息をつく。
本来、松口は井戸田の泣き顔にものすごく弱いのだ。
ここでこれ以上に突き放したりすれば、松口は井戸田に嫌われる恐れがあった。
それだけは何としても避けたい松口・・・へたれである。
「わかった。しばらくの間は俺が預かったるわ」
「え・・・」
「でも、そいつを貰ってくれる奴が見つかるまでやぞ!あと、世話はお前がせぇよ!」
「松口さん・・・ありがとうございます!!よかったな、猫ちゃん!」
嬉しさのあまりか、井戸田は子猫にキスをした。
それを見て、松口の顔があきらかに不機嫌となる。
「・・・井戸田」
「え?」
「お前、俺がおんのにええ度胸してるやんけ」
「えぇ?」
「今日は家に来るんやったな・・・着いたら、覚悟しとけ」
「そ・・・そんな・・・」
青ざめる井戸田を楽しそうに見つめながら、松口は悪意のある微笑を浮かべた。
end
コメント
久しぶりの潤さん受けvv
松口さんがガキくさいなぁ・・・。
でもこの人は嫉妬深いはずだ。