<パート4・高声園児はモテるのです>
この幼稚園にはヤナと呼ばれている男の子がいます。
一見、普通の可愛い男の子なのですが・・・。
ヤナの特徴は女の子のような高い声。
その声と可愛らしい容姿のおかげで、ヤナはモテモテなのでございます。
「ヤナー、遊ぼうやー」
「あ、善之ーっ」
そんなヤナのことが大好きなのは善之。
善之はのんびりとした男の子。
彼は可愛らしいヤナにべた惚れなのです。
「何して遊ぶん?」
善之と遊ぶことが多いヤナも、善之が大好き。
とは言ましても、善之とは違った好きなのですが・・・。
「んー・・・ヤナは何したいん?」
「じゃあねー・・・隠れんぼ!」
「ええよ」
二人だけで隠れんぼというのもなかなか珍しいのですが、善之はヤナの為なら何でも「ええよ」と言ってしまうのでありました。
「じゃあ、じゃんけんしよーやー」
と、その時です。
「ヤナ、オレもまぜてやっ」
「あ、増田にいちゃんやー」
ヤナと善之より一つ上の増田くんが遊びにやって来ました。
増田くんを兄のように慕っているヤナは喜んでおりますが、善之はどこか嫌そうな顔。
何故なら、善之と増田くんはライバルなのです。
増田くんも、ヤナのことが大好きなのですから。
「善之、増田にいちゃんもまぜていい?」
「・・・ええよ」
しぶしぶ承諾する善之ですが、その顔はあきらかに不満そう。
「じゃあ、おれが鬼なーっ。善之と増田にいちゃん、100数えるから隠れてや」
鬼となったヤナは目をとじて数えだします。
しかし、一向に隠れようとしない善之と増田くん。
二人は何やら睨み合いを始めたようです。
「増田にいちゃんでもヤナはわたせへんで」
「何いうてんねん。ヤナはおれのやっ」
「おれのほうがヤナとなかええよっ」
二人とも、隠れないのですか?
そうしているうちに、ヤナは100まで数えてしまいますよ?
「きゅうじゅうきゅー、ひゃーくっ!・・・あ、増田にいちゃんと善之、見ーっけ!」
ほら、見つかってしまいました。
というか、ヤナのすぐ側で睨み合いをしているのですから当然と言えば当然ですね。
「善之ー?増田にいちゃん?どうしたん?」
「ヤナ!おれのほうが好きやろ?」
「え?増田にいちゃん?」
「おれのほうが好きやろ?ヤナっ」
「善之?」
二人に詰めよられ、ヤナは何が何だかわからない様子。
その上、二人の顔が少し恐くなっていたので、ヤナは泣き出してしまいました。
「うわぁぁぁぁぁんっ」
『え・・・ヤナ!?』
「ふえぇぇぇんっ」
大声で泣き続けるヤナを前に、二人はどうすればいいかわからずおろおろしております。
次第に、その鳴き声を聞きつけて他の園児たちも集まってきました。
「あー、増田くんと善之がヤナちゃん泣かしたー」
「いけないんやーっ」
すると、そこへ岡田先生がやって来ました。
岡田先生は泣きじゃくるヤナを抱き上げてあげます。
「ヤナ、どうしたんや?」
「善之と増田くんがヤナちゃん泣かしたー」
「善之と増田が?」
菅ちゃんの告げ口に、岡田先生の視線が善之と増田くんに注がれます。
その目は少し怒りがこもっているようです。
「お前ら、イジメはあかんって言うてるやろ!」
「ちゃうで!おれら何もしてへん!」
「そうやでーっ。せんせー、おれらのしゅちょうも聞かんで怒るのは大人としてよくないわーっ」
「屁理屈ぬかさんでええわ!あとで説教やからな!」
『えー・・・』
善之と増田くんを叱りつけ、岡田先生はヤナの背中をポンポンと軽く叩きながら教室へと入って行きました。
その様子を悔しそうに睨みつける善之と増田。
二人は知っているのです。
岡田先生がヤナのことをすごく可愛がっていることを・・・。
「せんせー、しょっけんらんようやで」
「ああいう寒いやつのこと、なんていうか知ってるか?」
「なんて言うん?」
「しょたこん、言うんやで」
end
コメント
最後は岡田先生にヤナちゃんを取られてしまいました。
しかし、告げ口はいかんぞ!菅ちゃん・・・。
いえ、私が書いたのだけれど。