<パート5・可愛いあの子は小猿ちゃん>
梶は小さい体の割によく動く可愛い男の子です。
今日も彼はちょこまかと園内を走り回ります。
そんな彼もまた、とってもモテモテなのでございます。
今日の梶は砂場で遊んでおりました。
何やらスコップを握りしめて一生懸命、山を作っているようです。
そんな梶に、ナルシストぎみな園児の西野くんが声をかけます。
「かぁじvv何してんねん」
「あ、西野っちや!山つくってんねん!」
「おれもまぜてやっ」
「ええでーっ」
ニッコリと笑いかけてくる梶に西野くんはメロメロ(死語)。
西野くんは小さくて可愛い梶のことが大好きなのです。
「梶、どうせならトンネルも作らへん?」
「ええよっ」
「じゃあ、もっと山つくろうや」
「うんっ」
何とも微笑ましい光景。
しかし、そんな二人を良く思わない子がいました。
その園児の名前は菅ちゃん。
顔は天使で中身は小悪魔という園児で、先生たちの手を焼いている男の子です。
菅ちゃんは二人に近づき、梶の背中に抱きつきました。
「うわっ・・・あ、菅ちゃんやぁ・・・びっくりしたぁ」
「梶ー、おれもまぜて?」
「ええよー」
「えっ!?」
誰とでも仲良くできる性格の梶は菅ちゃんを快く遊びにまぜてあげようとしますが・・・。
何やら西野くんはとっても嫌そう。
「西野っち、嫌?」
「え・・・んと・・・」
梶と二人で遊びたい西野くんですが、梶に上目使いで「嫌?」なんて言われては首を横に振るしかありません。
仕方なく、三人で遊ぶことを承諾するのでした。
「梶、トンネル作るんやったら川も作ろうや」
「うんっ・・・あ、でもー・・・水ないで」
「バケツに入れてくればええやん」
「じゃあ、持ってくるっ」
無邪気に水飲み場へと走っていく梶。
一方、砂場に残された西野くんと菅ちゃんはあきらかに険悪ムード。
「西野、わるいけど・・・梶はおれのものやで」
「な、なにいうてんねん!菅ちゃんになんか梶はわかせへんで!」
どこかで聞いたような会話ですけれども・・・菅ちゃんは本当に園児なのでしょうか?
何やら雰囲気が子供らしくないのですが・・・。
そうこうしているうちに、梶がバケツに水をいっぱい入れて戻ってきました。
しかし・・・。
「水もってきたでーっ・・・あっ!」
どてっ!! ばしゃっ!
『梶っ!!』
梶は足下に何もないのに転んでしまいました。
派手に水をかぶり、全身がびしょ濡れです。
驚いた西野くんと菅ちゃんがすぐさま駆け寄ると・・・。
「ふえぇ・・・」
梶は涙目になってはおりますが、懸命に耐えていました。
「梶、だいじょうぶ?」
「足、いたいぃぃ」
「あっ!血出てるっ」
「えぇ!?」
梶の膝からは幼稚園児の目から見れば大量の血が流れ出ておりました。
転んだ時に足を地面にすりつけてしまったようです。
西野くんが急いで持っていたハンカチで拭いてあげますが、血はなかなか止まりません。
「どないしよ・・・血、止まらへんわ」
「おれ、死んじゃうの?」
「死ぬわけないやろっ」
不安がる梶を必死に励ましてあげる二人ですが、所詮は幼稚園児。
その顔はどうすればいいかわからず、困惑しております。
すると、そこへ宇治原先生と高井先生がやって来ました。
「あ、高井せんせい!目窪せんせい!」
「誰が目窪や!」
宇治原先生は目が窪んでいることから、菅ちゃんに目窪先生と呼ばれている可哀想な先生です。
「どうしたん?」
一方、高井先生はとっても男らしくて頼りになる先生。
西野くんが急いで事情を説明します。
「梶が転んで足から血が出てるんやっ」
「ああ、すり傷やな。大したことないけど、ちゃんと手当せな」
「おれ、死なない?」
「これくらい平気や。しかし、梶は偉いな」
「なんで?」
「泣かなかったやろ?偉いで」
梶の頭を優しく撫でてやり、高井先生は梶を抱き上げて教室へと連れて行きます。
そんな梶を心配そうに見送る西野くんと菅ちゃん。
「梶、大丈夫やろか」
「大丈夫やって!高井先生が治してくれるんやから」
「・・・目窪先生は何もせぇへんな」
宇治原先生は園児に馬鹿にされている可哀想な先生です。
宇治原先生は京都大学という素晴らしく頭のいい大学を卒業している優秀な先生なのですが。
園児にそんなことが理解できるはずないのでありました。
しかも・・・。
「そういえば、おかんに聞いたで」
「え?」
「目窪先生みたいな先生はようじしゅみなんやろ?」
「えぇぇ!?」
「何?菅ちゃん、ようじしゅみって」
「わかんないけどな、目窪先生みたいな奴のことらしいで」
「・・・」
ですが、宇治原先生と高井先生も梶のことがお気に入りなのです。
まぁ、実は園長も梶がお気に入りだったりするのですが・・・。
変な誤解をされているのは宇治原先生だけのようですね。
end
コメント
最後が宇治原さんで終わった。
宇治原先生は菅ちゃんに苛められていそう。