<キャッチボール>



小学校の頃、二人の間で密かに流行った遊び。



それは、久しぶりのオフでのこと。

徳井くんがニコニコしながらグローブとボールを持ってきた。

「福、キャッチボールしようや」

「・・・ええよ」

特に断る理由もないから頷くと、徳井くんはとても嬉しそうやった。



「投げるでー」

「おー」

二人で公園に来てキャッチボールをするなんて、何年ぶりくらいやろ。

小学校の頃によく二人でキャッチボールしたのを覚えてる。

そんなことを考えてるうちに、徳井くんの投げたボールが僕の方に飛んできた。

それをグローブで取り、すかさず投げ返す。

始めは普通に投げて。

だんだんと早く。

たまに悪戯心で強く投げたり、遠くに投げたり。

次第に思い出す童心が懐かしかった。

「福、楽しい?」

「まぁまぁ」

「俺も」

会話はそんな短いものばかり。

それでも、僕らは互いに楽しんでいると思う。

きっと、徳井くんとなら何時間キャッチボールしても飽きない。

「・・・」

小学校の頃、二人でキャッチボールして・・・気づいたら夕方になっていたことを思い出した。

何時間も何時間も飽きずにボールを投げあって、帰りが遅いとおかんに怒られたっけ。

あの時、頭を叩かれて痛かったなぁ。

そんなことを思い出して笑った。

「・・・?」

不意に、ボールが返ってこなくなる。

「徳井くん?」

「福、何で笑ってんの?」

「ああ、思いだし笑い」

「・・・ふーん」

徳井くんの顔はあきらかに不満そうやった。

何だか、機嫌を悪くしたみたい。

「どうしたん?」

「・・・別に」

ああ、拗ねてるんやね。

僕がキャッチボールに集中していないから?

「・・・ガキくさいで」

「ええやんか」

「うん。ええよ」

僕も久しぶりで楽しいから。

たまには子供みたいに拗ねてる徳井くんも見たいから。

「ごめんね?徳井くん」

「・・・・・・」

まるで大きい子供を相手にしてる気分や。

そう思いながら徳井くんの頭を撫でてあげると、ふいにキスされた。

「・・・んっ・・・」

「・・・・福」

「何?」

「続きしようや」

「せやね」

そしてまた、キャットボールを始める。



end


コメント

拗ねたよ!

おいおい、徳井さんガキくさい!

でも福ちゃんは大人だから大丈夫なのです。