<食べさせてあげたい>



「・・・藤原」

「んー?」

「お前、腹減ってへんか?」

「別に」

「・・・」

「井本は?」

「俺も空いてへん」

「あ、そ」

久しぶりのオフだからと外出したはええねんけど・・・。

井本の様子がおかしい。

いつもだったら俺の意見なんか聞いたりせぇへんのにな。

「・・・井本」

「なんや」

「そこの店入ろうや」

「・・・せやな」

別に喉が渇いたわけではないねん。

だけど、井本がさっきから喫茶店やらを気にしてるみたいやから誘ってみた。

案の定、井本は断らない。


適当に選んだ店やったけど、内装は落ちついた感じでまぁまぁ良い店や。

俺たちは窓際の席に座り、お互いにメニューを開いた。

「藤原」

「何?」

「お前、甘いの好きやったか?」

「・・・まぁ、嫌いではないで」

「そうか」

「・・・店員さん呼ぶで?」

「おう」

テーブルに添え付けられているボタンを押して数十秒。

すぐに店員がやって来て張り付かせた笑顔で「ご注文は?」と聞いてきた。

特別、飲みたいものも食べたいものもなかった俺はコーヒーを頼む。

それやのに、井本は俺の想像に反するものを注文しよった。

「これ」

店員にメニューを見せながら指を指す。

すると、店員は笑顔のまま・・・。

「はい。コーヒーとフルーツパフェですね!」

「・・・え?」

そう言って厨房へと消えていく店員を見送る井本を見つめ、俺は驚愕するばかりや。

あの井本がフルーツパフェ!?

コーヒーをブラックで飲むような井本がそない甘いもんを頼むなんて・・・。

「井本、何かあったんか?」

「あ?」

「・・・なんでもない」

しばらくして、さっきと違う店員がコーヒーとフルーツパフェを持ってきた。

「・・・井本、全部食うんか?」

「悪いか」

「いや、悪くはないねんけど」

「・・・」

「甘そうやん。お前、甘いの苦手やろ」

「せやから手伝え」

「へ?」

「食うの手伝え」

「・・・ええけど」

たまに甘い物が食べたくなることは確かにある。

なんや、井本もそういうことなんやろか。

でも、それにしても何でパフェやねん。

そんなことを考えていると、井本がスプーンで生クリームをすくって俺に差し出してきた。

「・・・え?」

「食え」

「え・・・いや・・・」

何で?

井本の行動の意味が理解できひん。

「ど、どういうこと?」

「・・・」

「・・・井本?」

「・・・」

井本は黙って俺に生クリームをのせたスプーンを突きつける。


「・・・まさか」


俺の脳裏にとてつもなくイヤな光景が浮かんだ。


これは、もしかして・・・。

阿呆みたいなカップルがよくやるという。

「はい、アーンvv」

っていうやつかい!!

俺とそれをやりたい言うことか!

嘘やろーっ!?


「・・・」

せやけど、もしやらなかったら後が恐い。

井本に殺されるか犯されるか。

腹を決めるしかないんやろな・・・。


少しして、腹を決めた俺はおずおずと口を開いた。

すると、井本が・・・ほんの一瞬やったけど嬉しそうな顔をする。

なんや、こんな顔もできんねや。

「・・・っ甘」

「そら甘いやろな」

「つうか、こんな恥ずかしいことさせんなぁっ////」

「・・・ふん」

「人に見られたらどないすんねん」

「知るか」

「・・・・」


結局、俺は井本の手によってフルーツパフェを全て食わされる羽目になった。



end


コメント

え・・・何これ。

いえ!井本×藤原ですよ!?

たまには甘いの書きたいんですよ・・・。

いつか、優しくて甘い井本さんを書きたい。