<音>



お前が創りだす音は、いつだって俺を魅了する。



「〜♪」

「・・・」

はずれた音程の歌が聞こえてくる楽屋。

俺は相方とは離れた場所に座って雑誌を読み、相方は椅子に座って目をとじながら気持ちよさげに自作の曲に適当な歌詞をつけて歌っている。

しかし、曲がよくても歌詞と歌い手がよくなかったら意味がない。

残念なことに、小堀には作曲の才能はあっても作詞と歌手の才能はまるでなかった。

「・・・」

このまま音程の狂った歌を聞かされるのも憂鬱。

俺は読んでいた雑誌を小堀に向かってぶん投げた。

「いたっ!!」

当てるつもりで投げたが当たるとは思っていなかった為、小堀の頭に雑誌が当たって驚く。

「何すんねん・・・」

そりゃあ、怒るわな。

小堀の不機嫌そうな目線に肩をすくめた。

「お前、音痴やねん」

「わかってるわ」

「わかってんなら歌うな」

「無理ー」

そう言ってまた歌い出す。

今度はさっきとは別の曲だった。

「さっきの曲はどこ行ってん」

「ちゃーんと頭の中に入ってるがな」

「・・・へたくそ。耳が腐るわ」

「・・・なんや?今日は突っかかるじゃないのよ、修ちゃん」

「修ちゃん言うな」

おかま口調やめろや。

「きしょいねん」

「そりゃどーも」

「歌詞がめちゃくちゃやな」

「同じ歌詞は二度と聞けへんで」

「そら適当に歌ってるだけってことやろ」

「そうや」


小堀がまた歌い出す。

さっきとはまた違う曲。

歌詞は適当、音程は最悪。


でも。


俺を魅了するには充分すぎる。



「修ちゃん」

しばらくして、満足したのか小堀が歌うのをやめた。

「なんや」

「この曲に歌詞つけて」

「・・・いきなりやな」

「ええやろ?」

「曲、覚えてへん」

「じゃあ何度でも歌ったるわ」

「・・・」


譜面にくらいおこせや。


結局、俺はへたくそな歌を何度も聴く羽目になる。



end


コメント

うわ・・・やっちまった。

修小のつもり。

この二人はこういう関係が好ましい。