<出せない手紙>
今時、ラブレターなんてカッコ悪い。
そんな価値観こそがナンセンスだと思う。
「・・・はぁ」
今日で何百回目かもわからない溜息をついた。
目にうつるのは見慣れた部屋の天井。
母親が干してくれたであろう布団の匂いが心地よい。
「あー・・・何でこんなに悩まなきゃいけないんだ」
頭に思い浮かぶのは同じクラスで同じ部活の親友。
不覚にもその親友に恋心を抱いてしまったなんて誰にも言えない。
「・・・」
ふと目を机の方へやると、先ほど書いたばかりの手紙が寂しく置かれている。
その手紙は俗に言う「ラブレター」という代物。
「・・・どうすりゃいいんだよ」
書いたから渡そう、などという簡単なものじゃあない。
相手は同性。
拒否される可能性がかなり高いのだ。
想いを伝えようと想わなければ今まで通りの関係を続けられる。
「・・・はぁ」
もはや数えることもしなくなった溜息を再度ついた。
その時、母親の自分を呼ぶ声。
「有田くんから電話よ」という声に心臓が跳ね上がった。
おそらく、今日の授業のノートを貸してくれという催促の電話だろう。
「・・・気持ちよさそうに寝てたな、アイツ」
そんなことを思い出して薄く笑った。
ちらりと目をやると、先ほど書いたばかりの手紙。
「・・・」
きっと、いつまでも出せないであろう恋文。
とりあえず、早く電話に出ようと思って部屋を出た。
end
コメント
切ないか?
よくわからない内容。
上→有のつもり。