＜涙＞

「何で、そういうこと言うん？」

「・・・え？」

梶の言葉に振り返ると、そこにいたのは目に涙をためている恋人。

あまりに思いもいらない展開に焦る自分がいた。

「か、梶？どうしたん？」

肩に触れようとすると震える小さな身体に困惑がつのる。

「・・・梶」

拒絶された事実に正直ショックを受けながらも震える声をおさえて名前を呼んだ。

すると、梶は大きな瞳から涙を流しながら口を開く。

「西野・・・俺、もうイヤや」

「なにが？」

「お前と、漫才するの・・・イヤや」

「・・・どういうことや」

「・・・・・・もう、辛い・・・」

「失敗したこと、悔いてるん？」

「ちゃうよ・・・」

「じゃあ、何で？」

梶が目線を床に落とした。

俺には梶が何でそんなことを言うのか全くわからない。

せやけど、俺が原因なのは確かやと思う。

俺は梶の顔を覗き込んでなるべく優しく聞いてみた。

「梶、俺が悪いん？」

「・・・だって」

「何？」

「西野、俺のこと・・・すぐ、けなしたり・・・死ねとか・・・言うやん・・・」

「・・・・それは漫才やろ？本心ちゃうで」

「わかってるけどっ・・・言われると、嘘でも辛いねん」

「・・・梶」

俺は梶を抱きしめることができずにいた。

嘘でも梶を傷つけたのは事実や。

梶の気持ちも考えずに漫才でウケるからと、大事な奴をネタにしたんやから。

「っく・・・ひっく・・・」

「梶、ごめんな？もう言わへんから」

「・・・っふ・・・くっ・・」

泣き続ける梶を前に何もできずにいる自分に嫌悪感を抱いた。

せやけど、それ以上に。

梶の涙を綺麗やと思っている自分を殺してしまいたかった。

end

コメント

なに？え？西野が変態？

いえいえ、変態なのは私です。

はい、さよならー。