<素直になろうや>
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それは、ルミネthe吉本での仕事が終わった後のこと・・・。
井本は先輩の芸人から映画のチケットを貰った。
どうやら、彼女と見に行く予定だったが急な仕事で行けなくなってしまったらしい。
映画の上映日は明日。偶然にも明日はオフ。チケットは二枚。
「恋人とでも見てこいや」
「・・・ありがとうございます」
恋人、という言葉に、井本の脳裏には一人の男の姿が浮かんだ。
果たして、アイツが恋人と呼べるのか。
確かに、肉体的な関係はある。というか、井本が無理矢理したのだが。
だが、お互いに好き合っているかと聞かれれば、首を傾げてしまう。
アイツは自分の事を嫌ってはいないだろう・・・多分。
ならば自分は?自分はアイツの事を好いてるだろうか?
「・・・っ」
考えているうちに頭痛がしてきた。
これも全てアイツのせいや、と勝手に決めつけた井本は自分の頭痛の原因でもある(と決めつけた)相方の元へ向かった。
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「お、井本どこいって・・・」
どかっ!!
「いだっ!!・・な、なにすんねん!」
「黙れ」
「黙れって・・・いきなり蹴り入れられて黙ってられるかい!」
戻ってきた井本に痛恨の一撃を入れられ、藤原はおもいっきり抗議するが、当の井本は知らん顔。
「お前のせいで頭痛いねん」
「何で俺のせいになんねん」
「うるさい」
その時、藤原は足下に落ちているチケットに気付いた。
「なんや?これ」
「あっ・・・」
先ほど、井本が藤原に蹴りを入れた時に落としたらしい。
井本は何て言い訳しようかと焦るが・・・。
「うわっ!これ話題の映画やんか!」
「・・・え」
「誰の落としもんやろなぁ?勿体ない」
「・・・」
藤原の勘違いにより救われた井本。
「ほんまに誰のやろ?」
「もらっとけ。見たいんやろ?」
「いや、見たいけど・・・」
「拾ったんはお前なんやから、お前のもんやろ」
「それは井本の考え方やろ」
「誰かと見に行ったらええ」
「・・・」
井本は内心で溜息をついた。
しかし、自分が持っていた所で誘える筈などない。
こんな時、素直じゃない自分に嫌気がさす。
「井本」
「あ?」
「一緒に行こうや」
「・・・は?」
「明日休みやし、どうせ暇やろ?」
「勝手に決めつけんな」
「暇やないんか?」
「誰も暇やないとは言ってない」
「じゃあ行こうや」
笑顔で自分にチケットを渡してくる藤原に、井本は内心で苦笑した。
決して顔には出さないようにしながら。
「男二人で映画か。むさいこっちゃな」
「ええやんかvv」
「・・・昼飯おごりな」
「えぇ!?」
気がつけば、頭痛はいつのまにか治っていた。
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end
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コメント
ひなさま、井藤リクエストありがとうございます。
こんなんでいかがでしょうか?
未熟者ですいません。
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