<二人乗り>
ちりんりちん、という音に振り返る。
『あ・・・』
声が見事にハモッた。
「何で自転車なんかに乗ってるん?」
「・・・たまには、バイクやなくてもええかなって」
「ふーん」
「徳井くんは何してんの?」
「・・・散歩」
正月ということもあり、二人とも実家に帰っていた。
だけど、実家に変化があるわけでもなく、いつも通りの退屈な正月。
こんななら、アイツと仕事してる方が楽しい。
そう思って外に出た。
そんな矢先に自転車に乗った福田に会う。
「福、どこか行くん?」
「んー・・・暇やったから」
「そか」
いつも一緒にいるから、こういう時はかなり困るわ。
別に話すこともなく、二人で歩いた・・・福は自転車やけど。
「なぁ、福」
「ん?」
「こうしてると高校の時みたいやな」
「せやねぇ」
「・・・後ろ、乗せて?」
「あかん」
「何でや」
「重い」
「・・・じゃあ、俺が運転したるわ」
「せやったらええで」
福がニッコリと笑って俺を前に乗せる。
後ろに福が乗った瞬間、少し自転車が重く感じた。
「いくで」
ペダルに足をのせると、全体重をかけてこぎ始める。
風が髪をなびかせた。
「徳井くーん」
「ん?」
「もっと早く」
「・・・無理」
「根性だせ」
「福も根性だして痩せてみ」
「・・・それは僕が太ってる言うこと?」
「いや、そんなんでもないで」
こんなテンションも珍しい。
せやけど、俺らはこんなんでいいと思う。
「徳井くん、下り坂」
「ころぶかもな」
「ころばない程度に」
「無理やわー」
そんなことを言っている間に、二人してころんだ。
やっぱり下り坂を二人乗りするんは危険やわ。
end
コメント
甘くねぇ。
でも、こんなんもいい感じ。