<愛に生きる男、その名は跡部>
今日も氷帝のテニス部は練習に明け暮れていた。
しかし、そのなかの一部の部員は違う。
おもに「レギュラー」と呼ばれる彼らは、テニスコートではなく・・・。
何故か部室にいた。
「腹減ったーー!!」
部室にあるレギュラー専用のイスに座りながら岳人が大声で叫んだ。
そのあまりに大きな叫びにすぐ隣にいた宍戸がイヤそうな顔をする。
「うるせぇな」
「だって腹減ってんだもんよ」
「・・・コンビニにでも行けよ」
「めんどくせぇ・・・でも、太郎がいねぇと好き勝手できていいなぁっ」
「同感」
岳人の言葉に宍戸が頷いた。
今日は日本全国音楽教師連盟の会議のため、顧問である榊が休みなのだ。
ゆえに、レギュラーたちはたまには休みたい!という一致により部室でダラダラと過ごしていた。
ちなみに、三年生のみである。
「でもこうしてるんも暇やなぁ」
「zzz・・・」
「ジローは相変わらず寝てるけどな」
「・・・あれ?跡部、さっきから何してんの?」
岳人が先ほどから携帯を握りしめている跡部に声をかけた。
しかし、跡部の返事はない。
不思議に思った岳人は跡部の顔を覗き込み・・・。
「うわっ!」
固まった。
何故なら、その顔はいつもの跡部とは違い・・・。
「きしょい・・・」
「こえぇ」
「景ちゃん、顔が気持ち悪いでっ!」
忍足に言われたらお終いである。
「うるせぇぞ、お前ら」
岳人たちの言葉に不機嫌そうな顔をする跡部・・・だが、その顔は何故か嬉しそうに緩んでいた。
いつもの跡部なら絶対に見せない顔だ。
三人は心底驚いた。
「跡部、何かいいことでもあったのか?」
「寝癖がいつもよりおさまってるとか?」
「あれって寝癖なん?」
「じゃあ、海釣りしてて鮫釣ったとか?」
「ありえねぇだろっ」
「zzz・・・」
「跡部、何でそんなに気持ち悪いんだよ?」
「岳人、その聞き方は問題あるで」
「つうか、そういうことじゃねぇだろ」
その時、今まで眠り続けていたジローが目を覚ました。
そして何気なく跡部の携帯に目をやったかと思うと・・・。
「・・・あれぇ?リョーマくん、来るんだぁ」
「てめっ!人の携帯を勝手に見るんじゃねぇ!」
『リョーマ?』
三人の声が見事にハモる。
「リョーマって青学の生意気な一年だろ?」
「猫みたいで可愛いのに態度でかい子な」
「・・・侑士、きもいっ」
「つうか、何で跡部が・・・・って、アドレス交換したのか?」
「えぇ!ずるいで、跡部!」
「だから、きもいって侑士」
「うるせぇぞ、お前ら」
「なぁ、何で青学の一年がうちに来るわけ?」
「ナイス質問、宍戸」
宍戸の問いに跡部が口ごもった。
どうやら、あまり答えたくないらしい。
すると、跡部の代わりにジローが答える。
「跡部はリョーマくんが好きなんだよー」
「てめぇ!何デタラメ言ってやがる!!」
「えー?本当だCー」
「・・・マジで?」
「でも、確かに跡部の好きなタイプだよな・・・気の強い系だし」
「俺も狙っとったのにぃ!」
「うぜぇよ忍足」
その時である。
「アンタら何してんの?」
5人の耳に聞き覚えのある生意気そうな声が聞こえてきた。
「あ、リョーマくんだぁ」
ジローの脳天気な言葉に他のレギュラーが一斉に振り返る。
すると、そこに立っていたのは青学の一年レギュラーで名高い越前リョーマであった。
「・・・アンタら、面白い顔してるね」
生意気そうな口調と猫のように大きな瞳の少年はクスリと笑い、跡部の方を見やる。
「景吾」
『けいごぉぉぉぉぉ!?』
「え!?何でそんな名前で?」
「そういう関係なのか!?」
「そんなぁぁぁ!俺、望みないやんかぁぁ!」
「うるせぇぞ、忍足!!・・・・りょ、リョーマ、よく来たな」
「ここ、案外遠いんだね」
「迷わなかったか?」
「うん」
あきらかに他の人と話す時と全く違う感じでリョーマに話しかける跡部。
その姿に残された四人は怪訝そうな顔をした。
「跡部って・・・マジ?」
「忍足だけじゃないんだな」
「それ、どういう意味や?宍戸」
「えー?でも、俺もリョーマくん好きだぜ?アドレス知ってるC」
「うそ!マジで!?」
「ジロー、いつの間に聞いてやがる!!」
「この間の試合で。なっ?」
「うん、ジロー面白いし。でもメールの途中で寝るのやめてくれない?」
「ああ、ごめーん。俺、どうしても寝ちゃうんだよなぁー」
「昨日も、メールしてたら・・・」
『昨日!?』
ちなみにこの叫びには跡部も入っている。
「ジロー、てめぇ・・・」
「俺悪くないC」
「ところで、部活は?」
「今日は太郎がいえねぇからサボってんだ」
「ふーん・・・なんだ、せっかくテニスしようと思ったのに」
「あ、じゃあ俺が相手してやるよっ!」
「俺もっ」
「宍戸!岳人!何でてめぇらが出てくるんだ!」
「えー?だって・・・なぁ?」
「お前とジローだけずりぃじゃん」
「あ、ほんなら俺も・・・」
「忍足、てめぇだけは許さねぇぞ!」
「なんでやねん!」
ぎゃーぎゃーと騒ぎだす氷帝レギュラー。
一人残されたリョーマは溜息をつき、ジローに声をかけた。
「相手してよ」
「いいぜー?」
「手加減しないよ」
「うわー、絶対に負けるC」
「・・・よく言うよ」
そして、二人が部室を出ていったことに彼らが気づくまで・・・あと一時間。
跡部の恋の行方はいかに!?
END
コメント
すいません。
好きなんですよ、他校×リョーマが。
とくに跡リョがね・・・。