<気持ちを言葉にする方法>
お前への気持ちを言葉にする方法なんて。
俺は知らない。
気まぐれに見たドラマやった。
一人の女が妻子持ちの男と不倫するという。
いかにも安っぽいドラマやった。
「・・・」
まるで、俺たちみたいやと。
自嘲気味に笑った。
久しぶりのオフだからといって、休めるとは限らない。
松口はパソコンの前に座り、忙しく指でキーを叩いていた。
しかし、彼の機嫌はあまりよろしくない。
何故なら・・・。
「大上、邪魔」
彼の相方である大上が背中にのしかかっているからであった。
「んー・・・」
「ほんまに、どけや。重いねん」
「んー・・・」
「・・・・いいかげんにせぇっ」
どかっ!
「いたぁっ!・・・っ・・・何すんねん!」
「どけ言うてもどかんからや」
涙目になりながら背中をおさえている大上を軽く睨みつけ、松口はパソコンに目を向けた。
おもいっきり大上の身体を突き飛ばしたのだ。
おかげで背中を強打してしまった大上は痛そうに顔を歪めるが、松口はあえて無視を決め込む。
しかし・・・。
「・・・祐樹ぃ」
「情けない声出すなや」
「・・・ごめんってぇ」
「・・・・」
「祐樹ぃ・・・」
まるで捨てられた子犬のように松口を見つめる大上がそこにいた。
さすがの松口も鬼ではない。
というか、そんな声出されては無視しているわけにもいかない。
「はぁ・・・少し、休憩するわ」
「じゃあ、コーヒー煎れたるわ!」
「おう」
「砂糖二つ?」
「三つ」
「・・・・」
「文句あんなら帰れ」
「ないですっ」
急いでコーヒーを煎れはじめる大上を見ながら、松口は笑みを浮かべた。
「まるで犬やな」
「祐樹ー、カップどこー?」
「戸棚の横や」
「前は戸棚の中にあったやん!」
「・・・場所変えたんや」
「なんで?」
何事もなかったかのように、首を傾げる大上に松口は何も言わない。
「・・・・祐樹?」
「・・・大上」
「ん?」
「俺のこと、好きか?」
「好きやで」
「・・・そうか」
松口は苦笑し、立ち上がって大上からカップを受け取った。
「祐樹、どうしたん?」
「んー・・・あの女は、こんな気持ちなんかなって」
「あの女って?」
「ドラマの女」
「何のドラマ?」
「・・・忘れた」
俺が女やったら、お前に泣いて縋るんやろか。
せやけど。
俺はお前への気持ちを言葉にする方法なんて知らない。
end
コメント
またこんな大←松を・・・。
好きだな、私。