<悲しみに咲き誇る>






U.side


悲しげに咲く花に、君の面影を見た。



「・・・梶?」

「・・・っ・・・宇治原さん」

「なんで、泣いてるん?」

「・・・うっ・・・うじ、はら・・さんっ・・・」

土砂降りの雨のなか、梶はそこにたたずんで泣いていた。

傘もささずにいる梶の身体は寒さからなのか寂しさからなのか、震えていて。

梶には西野がいるとはわかっていても、思わず抱きしめずにはいられなかった。

「梶、どないしたん?」

「ふっ・・・うっ・・・にし、の・・が・・・」

「西野が?喧嘩したん?」

冷えきった身体を抱きしめ、泣きじゃくる梶の頭を優しく撫でてやる。

「・・・わかれようって・・・」

「・・・・西野が、そう言うたんか?」

「はい・・・ふっ・・・あか・・・ん、そんなんっ・・・」

「梶・・・ほんまなんやな?」



その言葉に衝撃を受ける自分がいた。



あの西野が?

梶と別れた・・・?



「梶、とりあえず俺の家に行こう?」

「ふっ・・・うあぁぁっ・・・」

「・・・俺が一緒にいたるから」







N.side


大好きな雨なのに、今日は何故か冷たくて。



「・・・出てったんか」

人の気配のなくなった部屋を無表情に眺めた。

面白半分に浮気したのは俺。

梶に別れを告げたのも俺。

それなのに、この気持ちは何やねん。

「・・・何で、出てくんや」

単純な賭のつもりで、軽い気持ちで。

どうせ、梶は俺なしでは生きられない。

どうせ、すぐに戻ってくるに決まってる。

「・・・・痛いわ」

胸が抉られるように痛む。

梶がいなくなったこの部屋が、異様に冷たく感じる。



窓の外に目を向けると、容赦ないほどに雨が降り続けていた。



「・・・傘、持ってへんやろが」



雨は嫌いじゃあらへん。

せやけど、どうして今日はこんなに冷たいんやろ。



「・・・っ」


すぐに追いかければよかったんや。

そうすれば、まだ許されたかもしれへんのに。



「・・・・梶」






K.side


ふと見上げた星空、また君を探してた。



「宇治原さん・・・すいません」

「ええよ。それより、早くシャワーあびてこい」

「はい・・・」

あそこで宇治原さんに抱きしめてもらわなかったら、俺は沈んでいたかもしれない。

温かいシャワーをあびながら静かに考えた。

どうして、西野はあんなこと言うたんやろ。



『好きな女できたから、別れてくれへん?』



・・・俺に飽きたから?

それとも、俺が馬鹿だから?



「・・・ふっ・・・」

そう考えると、また涙が溢れた。



「・・・見えへんよ、西野」

雨が冷たすぎて、お前を探すことができへん。




いくつ夜を越えれば涙は強さになる?






会いたくて愛しくて触れたくて苦しくて。

届かない伝わらない叶わない遠すぎて。




end


コメント

これ、続きですね。前の作品と。

すぐに西野さんは謝りに行くんですけど、遅かったんですね。

すでに梶くんは宇治原さんに気持ちがいったんで。

まだ続くのかなぁ?

気まぐれに続きそう。