<本音で言って>

ある日、藤原の阿呆が俺に聞いてきた。

「俺のこと、ほんまに好きなんか?」

「・・・あ?」

「だから、ほんまに俺のこと好き?」

「知るか」

「ふーん」

それだけ。たったそれだけの会話だった。

俺はパソコンを打ち、藤原はゲームをしている最中の会話。

それ以降、藤原は口を閉ざし、ゲームに夢中になっていた。

俺もとくに気にすることなく、パソコンに目を移す。

そして次の日、藤原は姿を消した。

「・・・」

朝、起きれば藤原の姿は何処にもなかった。

置き手紙も、何も残さずに・・・。

「どこ行ったんや」

別に、同棲していたというわけやない。

アイツが勝手に俺の家に住みついただけ。

それが、今更いなくなったからといって・・・。

「どうこうする気はないで」

勝手に住みついて、勝手に出ていっただけのことや。

俺の知ったこっちゃない。

「・・・ふんっ」

まさか、昨日のことで怒って出ていった?

「・・・まさかな」

そんなん気にするのもばかばかしい。

さらに次の日・・・。

俺は雑誌を読みながらゴロゴロしていた。

何度も読んだ先月号の雑誌。

もう今月号が出ている筈。

「藤原、雑誌買ってこ・・・」

いないんやったな。

読みたい雑誌が読めなくてイライラする。

何でいないねん、アイツ。

自分で買いに行くのは絶対に嫌や。

「くそっ」

その時、目についたのは藤原が持ち込んだゲーム機。

「・・・」

暇つぶしにと思い、電源を入れた。

「・・・あきた」

簡単すぎて・・・と言えたらいいのかもしれへん。

生憎、ゲームなどというものはあまりやらない。

言うたら、初めてに近い。

「初めてでクリアできたら天才やっちゅうねん」

まるで負け犬の遠吠えみたいで腹がたつ。

こんな時、近くにアイツがいないと更に三割り増しや。

「ストレス解消ができひん」

俺は溜息をついて床にゴロンと横になった。

「・・・くそっ」

いなくなって、初めてその人がどれだけ必要だったかわかる・・・。

前に藤原が読んでいた小説にそんなことが書いてあった。

「・・・阿呆らしい」

俺がアイツのことなんか、どうも思ってへん。

アイツが必要?んなわけないやろ。

「あんな奴、いないほうが・・・」

「そうなん?」

「!?」

突然、藤原の声が降ってきた。

驚いて振り返ると、そこには藤原が立っている。

「・・・な、何してんねん」

「は?何してるって?」

「出ていったくせに、何いまさら戻ってきてんねん」

「出てった?」

「・・・あ?」

「はぁ?何言うてんねん、お前」

「・・・何処行ってたんや」

「実家。法事がある言うてたやろ」

「聞いてない」

「携帯の留守電に入れといたで」

「・・・あ」

俺は急いで携帯を取り出した。

この二日ばかり、全く気にしてなかったわ。

墓穴を掘った事に後悔する。

「・・・お、お前が変なこと聞くから!」

「はぁ?」

「お前がいなくなる前の夜や!」

「前の夜?・・・あぁ、あれか」

「せやから・・・俺は・・・」

くそっ、何言うてんねん!

「くあっ!イライラする!とにかく、お前のせいでこの二日間、俺のストレスはたまりまくりや!!」

「そんなん、俺のせいにされても・・・」

「責任とれや」

「はぁ?」

あまりにイライラする。

こんな阿呆面ひっさげた奴に悩んでいた自分が阿呆みたいや。

「ストレスたまってんねん。発散させろや」

「な、殴られる・・・?」

「安心せぇ。殴ったりはせぇへん」

「そ、そか」

「ま、痛いのは変わらんけどな」

「え?」

「二日分の責任とれ」

「えぇぇ!?む、無理に決まってるやろー!」

青ざめている藤原の顔を見ているうちに、だんだんとイライラも消えてきた。

「藤原」

「え?」

「この前の前言撤回したるわ」

「・・・?」

「愛してんで」

「っ///い、いきなり何言うてんねん」

「お前ほど、俺の加虐心を煽る奴はおらへんねん」

「・・・」

「せやから、お前はずっと俺の横におったらええ」

「・・・それは、喜んでええんか?」

「当たりまえやろ」

end

コメント

ヒナさま、いかがですか?

個人的には不完全燃焼です。

すいません。

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