<お前やないとあかんねん>

まだ俺らが純粋やった頃、手を繋いで帰ったのを覚えてる。

幼い頃に交わした約束を、アイツは覚えてるのだろうか?

一緒に見た夕焼けはやけに綺麗で、夕焼けに照らされたアイツはもっと綺麗やった。

そんな夕焼けを見つめているアイツを、俺は見つめていたんや。

今でも、あの夕焼けを見ることはできるんやろか。

大人になって、世間の矛盾を知り、すっかり汚れきってしまった今の俺に・・・。

夕焼けに照らされた綺麗なアイツを見ることはできないんやろか。

・・・なんて、すこしセンチメンタルな気分に浸ってみたり。

今の俺は大人で、幼い頃に交わした約束など意味がないことを知っている。

だけど、少しくらい、夢見さてほしいねん。

アイツといることの幸福感を失いたくない。

せやから、今のままで時が止まったらどんなに幸せか。

でも、そんなん無理やし。

つうか、こんなん俺らしくない。

「徳井くーん」

背後から聞こえてくる福の声。

俺は目尻に感じた熱いものを拭い、口にくわえていた煙草をもみ消した。

「福」

名前を呼んで振り返れば、福の笑顔があって・・・。

「徳井くん、何してんの?」

「夕焼け見てた」

「夕焼け?うわぁ、綺麗やねー!」

「・・せやな」

俺は、もっと綺麗な夕焼けを知っとる。

お前は覚えてないかもしれへんけど、ほんまに綺麗やと思った。

そして、そんな夕焼けに照らされたお前に恋したんや。

「・・・徳井くん」

「ん?」

今更、そんなこと言えへんけどな。

今の俺たちは大人で、子どもの頃のように「大好き」なんて言えない。

手を繋ぐことさえできない。

この気持ちを伝えることさえできない。

「あんな・・・」

「なんや?」

「徳井くん、ずっと一緒にいてくれる?」

「・・・福?」

「僕、阿呆やから上手く言えへんけど・・・。徳井くんと一緒にいたいねん」

「・・・」

「覚えてる?小さい頃にすごく綺麗な夕焼け見たやろ?」

「・・・」

「あん時にな、徳井くんとずっと一緒にいたいって思ったんや」

「・・・」

「僕、徳井くんのこと好きやねん」

「・・・」

お前は、俺に出来ないことを簡単にしてしまうんやな。

昔からそうやった。

それが、どれだけ俺の救いになってきたか・・・。

「徳井くんは?僕と一緒にいたくない?」

「いたいに決まってるやろ」

「ほんまに?」

「お前以外に誰が俺の隣におんねん」

「徳井くん・・・」

「俺も、あの時に福と一緒にいたいって思ったんやから」

「ほんまやね?ほんまにほんま?」

「ほんまや。お前やないとあかんねん」

「僕も、徳井くんやないとあかんよ」

そう言って、昔のように手を繋いだ。

俯いている福の顔を覗き込むと、夕焼けに負けないくらい赤くなっていた。

「福?」

「徳井くん・・・」

「ん?」

「ずっと一緒にいようね」

「ずっと一緒にいような」

二人、顔を見合わせて笑う。

福の手が俺の手を強く握り、俺は福の手を強く握り返した。

end

コメント

ランキング一位は徳福でした。

私にしては珍しく、甘い?

つーか甘いのか、これ?

まぁ、とにかく!おめでとうチュートリアル!!

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