<おまじない>

「梶ーvv俺のこと好き?」

「好きやない」

キッパリと言われた・・・。

しかも、即答0.3秒。

少しくらい考えてくれてもええやんか(泣)

梶と付き合いはじめて半年以上たつけど、今だにキス以上のことはしてない。

手だって繋がせてもらえない。キスだって誰もいない所じゃないとさせてもらえない。

エッチしようなんて言うたら・・・殺されるな。

だけど、俺たちは愛し合っているから付き合ってるとちゃうんかい!

それなのに、何であんなにつれないねん。

「はぁ・・・」

俺は溜息をつきながら夜の街を歩いていた。

そんな時、とある露店に目がとまる。

別に露店なんかに興味はないねんけど、何故か気になって足を止めた。

そして、目に飛び込んできたのは・・・。

「魔法のアイテム、ラブストーン?貴方の願いを叶えます?」

ピンク色のハートの形をした小さな石。

俺も大人や。こんなんに引っかかるほど阿呆やない。

「女子高生じゃあるまいし・・・」

そう言って、その場から離れようとするが・・・。

やっぱり気になる。

「お兄さん、その石買う?」

俺がしばらくそのラブストーンを凝視していると、露店の主らしき男が声をかけてきた。

「いや、その・・・」

「そのラブストーンはどんな願い事も一つだけ叶えてくれる石だよ」

「どんな願いも?」

「ただし!石にヒビが入ったりしたら効果はなくなるけどね」

「・・・」

ほんまに効くんやろか?

思わず買うてもうたわ・・・。

こんなおまじないとかに頼る羽目になるなんてな。

「なになに?この石を肌身離さず持ち歩くと、それだけで貴方の願いがかないます?ほんまかい」

ま、とりあえず持っとくか。

もしかしたら、ほんの少しくらいは効果があるかもしれへんしな。

翌日、俺は石をズボンのポケットに入れ、いつも通り仕事に向かった。

「おはようございまーす」

いつものように楽屋に入り、挨拶をする。

すると・・・。

「あっくんvv!」

「へ?」

すでに台本を読んでいた梶がこちらを向いたかと思うと、今まで見せてくれたことがないくらい満面の笑みで俺の名前を呼んだ。

つうか、あっくん?あっくん・・・って俺のことかい!

「か、梶?」

「おはようvv」

「お、おはよう」

何や?梶の目が妙に潤んでいる気が・・・。

「あっくんが早く来ないから、俺寂しかったんやでvv」

そう言って、梶が俺に抱きついてきた。

か、かわええ!!!

そのあまりの可愛さに、俺も梶を抱きしめ返す。

「ごめんなぁ。ちょっと寝坊してん」

「仕方ないなぁvv」

な、なんや?この激プリさは!!

梶のあまりの豹変ぶりに、楽屋にいた他の芸人も唖然としている。

「まさか・・・あの石のおかげ?」

まさかとは思うけどな。

「あっくんvv今日、仕事が終わったらあっくんの家に行ってもええ?」

「でも、今日は用事ある言うてたやんか」

「嫌や!あっくんの家に行きたい!」

「梶・・・vv」

「あっくん・・・キスして」

「えぇ!?」

な、なんてこと言うんや!梶ぃぃ!!

つうか、この石どこまで凄いねん!!

「梶、ここは楽屋やで?」

「やぁ!ここでキスして!」

「・・・梶vv」

普段の梶やったら絶対にありえへん事やな。

俺は他の芸人たちが注目してるなか、梶に触れるだけのキスをした。

しかし、梶は不満そうな顔をする。

「それだけ?」

「何が?」

「あっくんの意地悪。わかってるくせに」

「しゃあないなぁ」

そう言って、今度は深く口づけた。

「ふっ・・・あっん・・・」

梶の口から吐息がもれ、目は先ほどよりも潤み、頬はピンク色に染まっている。

なにもかもが、かわええ!このまま押し倒してしまいたい程や。

その時・・・。

イチャつく俺たちを呆然と見ていた高井さんが我に返ったのか、ものすごい形相で近寄ってきたかと思うと・・・。

「いい加減にせぇ!!!」

俺たちをべりっと引き離した。

その衝撃で、俺は壁に背中全体をぶつける。

梶は梶で床に倒れ込んだ。

「か、梶!大丈夫か!?」

俺が急いで梶に近寄ると・・・。

梶は顔を真っ赤にして俯いていた。

「梶?どないしたん?」

「・・・あっくん」

「なんや?vv」

何故か嫌な予感がする。

梶の笑顔の背後で、ごごごごごっという地鳴りの音が聞こえてくるような・・・。

その時、ポケットから何かが転がり落ちた。

見てみれば、それはヒビがはいったラブストーン・・・。

「!?・・・か、梶?」

俺は冷や汗を流しながら梶に声をかけた。

すると、梶はとても綺麗な笑顔で・・・。

「死ねや、腐れ外道ーーーー!!!」

「ぎゃーーーーっ!!」

後から聞いた話、梶はおまじないの効果が出ていた間のことを全て覚えていたらしい。

そして、俺はというと・・・。

散々、ボコられたあげく、一ヶ月触るなの刑に処せられた。

「梶ぃぃ・・・俺が悪かったて、許してやぁ」

「あかん!」

「梶ぃぃぃ・・・」

しかし、また機会があればラブストーンを買いに行こうと思ってます。

end

コメント

こりない人ですねぇ。

私の中の西野はいつもこんなです。

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