<最高のプレゼント>
・
7月3日は俺の誕生日や。
それなのに、梶のやつ全く覚えてならしい。
この間、さりげなく言ってみたら・・・。
「梶、今日って空いてるか?」
「今日?菅さんに飲みに行こうて誘われてる」
「・・・」
菅ちゃん・・・嫌がらせかい!!
アンタ、俺の誕生日めっちゃ覚えてるやろが!
俺はがっくりと肩をおとし、腹いせに宇治原さんの元へ行った。
「そういうわけで、アンタの相方なんとかしてくださいよっ!」
「そんなこと言う為に俺の家に来たんか?」
「そうです」
「暇やな」
「別にええじゃないですか。宇治原さんの家になんてどうせ誰も来ないでしょ」
「いらんこと言うな!!」
俺の言葉に、マジでヘコむ宇治原さん。
聞いてみれば、最近は菅ちゃんでさえ来ないらしい。
「人間性の問題ちゃいますか?」
「お前に言われたないわ」
「ま、ええやないですか。俺がこうして来てるわけですし」
「お前に来てもらっても嬉しない」
「酷いですわ。誰やったらええんですか」
「・・・菅ちゃん」
「何で来ないんですか?」
「菅ちゃんは元々ヒッキーみたいなとこあるからな」
それは何となく納得できる。
俺も菅ちゃんの家には行ったことない。
「付き合い初めて半年たってからやで?菅ちゃんの家に行ったの」
「はぁ」
「プライベートを大事にするのはええけど、あまりにも大事にしすぎやろ!」
やばい・・・。
愚痴を聞いてもらうつもりが、愚痴を聞く立場になってきとる。
「う、宇治原さん。そろそろ帰りますわ」
「そうか?」
そう言う宇治原さんはどこか寂しそうやった。
どんだけ寂しがりややねん、この人。
だが、今は宇治原さんに同情してる暇はない。
宇治原さんの家を出た後、すぐに梶の携帯に電話をかけた。
『もしもし?』
「梶か?」
『西野っち?何か用?』
「今すぐ会えへんか?」
『今は無理。菅さんとおんねん』
また菅ちゃんかい!どこまで俺の邪魔すんねんアンタ!!
「ちょっと替わってや」
『ん、わかった』
しばらくして、菅ちゃんの異様に明るい声が耳に入ってきた。
『なんやねん、西野。梶と楽しく遊んでんねんから邪魔すなや』
「そらこっちの台詞や!菅ちゃん、俺の邪魔して楽しいか?」
『めっちゃ楽しい』
この人・・・。小悪魔やなくて、悪魔やがな。
「宇治原さんが寂しがってたましたよ」
『宇治原ぁ?』
「かなり落ち込んでましたから自殺でもするんとちゃいますか?」
『自殺?そないなタマやないやろ』
「いや、本当にこの世の終わりみたいな顔しとった」
『・・・ほんまか?』
俺のその言葉に、少しばかり菅ちゃんの声に焦りの色が混ざる。
「ほんまですって。早く会いに行ってあげた方がええと思いますけど?」
『・・・梶、悪いけど今日はなしや』
やった!作戦成功や!!
俺が内心で喜んでいると、携帯から梶の声が聞こえた。
『もしもし?西野っち?』
「梶、菅ちゃんはどないした?」
『なんか走って行ってもうた』
「ふーん?じゃあ、今から会えへん?」
『うん、まぁええけど』
「今どこや?俺が行くわ」
携帯をポケットにねじ込み、俺は梶がいる場所へと急いだ。
・
「梶!」
「西野っち・・・」
「待ったか?」
「そない待ってへんよ。どこにいたん?」
「宇治原さんの家の近く」
「なんで宇治原さんの家?」
「・・・悪魔のせいや」
「は?」
「いや、何でもない」
「?」
俺の言葉に首を傾げる梶。
「ところで、梶」
「あ、そや!西野っち!」
「な、なに?」
「誕生日おめでとう!」
「へ?」
「菅三に誘われてたから明日にしよう思ってたんやけど・・・」
「覚えてたん?」
「忘れるわけないやんか!」
「・・・梶vv」
考えてみればそうやな。
梶が俺の誕生日を忘れてるわけないやんか!
「でもな、まだプレゼントないねん」
「え!」
「ごめん。明日買おう思ってたんや」
「・・・」
でもまぁ、誕生日を覚えてもらってただけでも嬉しいしな。
「別にええで」
「あっ!じゃあ・・・」
「えっ!?」
突然、梶が俺に抱きついてきた。
あまりに突然の事態に俺の心臓はおもいっきり跳ね上がる。
「か、梶?」
「俺がプレゼントじゃ、あかんかな」
「えぇ!?」
う、嬉しすぎる・・・。
顔を赤く染め上げて俺の胸に顔を埋める梶を、俺はおもいっきり抱きしめた。
「西野っち?」
「最高のプレゼントや。ありがと、梶」
「西野っち・・・vv」
そして俺は、はにかむように微笑む梶にキスをした。
これ以上の幸せは他にはないような気がする。
ほんま、最高のプレゼントや。
「梶、そういうわけで俺の家に行かへん?」
「なんで?」
「せっかく貰ったんやし、ゆっくり堪能したいねん」
「・・・阿呆vv」
・
end
・
コメント
私にしては珍しく甘い西梶ですね。
いや、誕生日くらいわね。
・