<悪い夢>
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君が他の奴と話しているのが許せない。
君は俺だけのもの。
誰にも渡さない。
いっそのこと・・・。
その目を潰して、その手足を切りとって、鎖で繋いでしまおうか?
・・・そうして、今日も俺は夢の中で君を殺す。
・
「・・・」
仕事後の楽屋。岡田は机に頬杖をついて椅子に座り、ただ一点を見つめていた。
いや、見つめているというよりは睨んでいるといった方が正しいかもしれない。
その目線の先には相方の増田の姿がある。
増田は後輩と楽しそうに談笑しており、岡田の視線になど気付く気配すらない。
「・・・」
しかし、岡田の放つ恐ろしい程のオーラに気がついた他の芸人たちは速やかにその場を離れていく。
そして、増田と話していた後輩も岡田のオーラに気付いたのか、不思議そうに首を傾げる増田をおいて楽屋を出ていった。
「なんや?」
「増田」
「ん?」
もはや、楽屋には二人しかいない。
もし、あのまま楽屋にいたら他の芸人たちは岡田の呪いを受けていたかもしれない。
立ち去った彼等の行動は正解である。
「なんや?そんな怖い顔して」
「・・・お前、何でアイツらと話すねん」
「は?そりゃ、話すやろ」
「話すな」
「は?」
「他の奴らと話すな」
「それは無理やろー、付き合いとかあるし」
「話すな言うてんねん!」
岡田は増田の肩をがっと掴み、壁に押しつけた。
「いたっ・・・何すんねん!」
増田は岡田を睨み付けるが、岡田は増田を離さない。
「他の奴と話すな」
「だから、無理言うとるやろ!」
「何でや」
「あ?」
「何でやねん」
「・・・っ!」
岡田の手に力がこもる。
増田は痛そうに顔を歪めた。
「なぁ、他の奴と話さん言うてくれや」
「・・・」
「頼むわ・・・」
「・・・いい加減にせぇ!」
ドカッ!
「今日のお前、なんか変やで?」
「・・・」
「今日はもう帰るわ。お前も早よ帰れ」
岡田を突き飛ばした増田は、下を向いて微動だにしない岡田にそう言って楽屋を出ていった。
後に残された岡田は床に座りこみ、顔を手で覆う。
「はぁ・・・。しゃあないやんか、あんな夢見てもうたら・・・」
岡田が見た夢・・・。
それは、増田を殺す夢だった。
「なんて夢見てんねん」
増田は岡田に比べればかなり社交的だ。
初対面の人にでも平気で話しかけるし、すぐに親しくなれる。
それが増田の良い所だとわかっていながらも、岡田はそんな増田が許せなかった。
お笑いの世界に岡田を誘ったのは増田だ。
何回も断る自分を、増田はしつこく誘ってきた。
他の奴でもいいだろうに、何故か自分だけに執着してきたのだ。
それが岡田は嬉しかった。
それなのに、増田は自分以外の奴と楽しげに話す。
岡田はそんな増田が許せなかった。
「・・・重症やな」
・
他の奴なんか見ないで。
他の奴になんか話しかけないで。
俺だけを見て、俺だけに話しかけて。
でないと、俺は君を殺してしまう。
ねぇ、俺をこんなにしたのは君自身。
どうか、俺に君を殺させないで。
・
end
・
コメント
くらぁ!!暗いですねぇ・・・。
嫌になるくらい、暗いですねぇ。
増田さん大好きなのに、ごめんなさい!
でも、私の岡増はこんな感じなんです。