<どないやねんっ>
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正直、コイツの気持ちが理解できひん。
本当にコイツは俺のこと好きなんかい。
俺からは何度も「好きや」て言うてるけど、コイツからは一度も聞いたことない。
なぁ、俺のことどう思ってんねん。
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「のん」
「んー?」
「好きや」
「・・・」
「何で黙んねん!」
「突然、何?」
岩尾は手に持っている本から目を離さずに言った。
そんな岩尾と向かい合わせになるように座り、後藤はジッと相方兼恋人を見つめる。
そんな後藤の視線が気になるのか、岩尾は嫌そうに眉間に皺をよせた。
「集中できひんやんか。睨むのやめてや」
「別に睨んでるつもりはない」
「じゃあ、何やの?」
「・・・のんは、俺のことどう思ってんねん」
「鳥に似てる相方」
「そうやなくて!」
「じゃあ、何?」
「俺のこと好きか?って聞いてんねん」
「じゃあ、後藤くんは僕のことどう思ってんの?」
「好きに決まってるやろ」
「なら、それでええやんか」
そう言って、岩尾は目線を本に戻す。
そんな岩尾にイライラした後藤は、ポケットから煙草を取り出した。
箱から一本取り出し、火をつけようとするが・・・。
「煙草吸うならベランダで吸うてや」
「なんやそれ、俺がどこで吸おうと勝手やろ」
「ここ、僕の家やで」
「・・・・」
そう言われては反論しようがない。
仕方なく、ベランダへと出る後藤。
「・・・アイツ、ほんまに俺のことどう思ってんねん」
告白したのは自分からだった。
考えてみれば、岩尾の口から「好き」という言葉を聞いたことがあるだろうか?
「・・・ないな」
考えれば考えるほど下へ落ちていく。
マイナス思考な自分に後藤は自己嫌悪に陥っていた。
「もしかしたら、俺だけなんかい」
その時・・・。
「後藤くん、冷えてきたかた中に入った方がええで」
「・・・のん」
「夕飯は何がええ?」
「・・・」
「後藤くんの好きなん作ったるよ?」
あどけない顔をしながらそう聞いてくる岩尾を、後藤は強く抱きしめた。
「なに?」
「のん・・・」
「ん?」
「捨てんといてな」
「何言うてんの?僕が後藤くんを捨てるわけないやろ」
「ほんまか?」
「やって、後藤くんのこと好きやもん」
しばしの沈黙・・・。
「ほんま・・・か?」
「僕は嘘は言わへんよ」
「せやったな」
「もうええ?僕、夕飯の準備したいねんけど」
「あ、悪い」
「後藤くん・・・」
「ん?」
「煙草くさいから、やっぱり外におって」
「・・・」
そう言うと、無情にもベランダの戸を閉める岩尾。
そんな岩尾の後ろ姿を見つめながら、後藤は叫んだ。
「どないやねんっ!!」
「後藤くん、近所迷惑やでー」
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END