<僕には貴方だけ>

ぶっちゃけた話、俺はいつだって不安やねん。

いくら好きだと言われても、あの人は誰にでも優しいから。

俺はいつだって不安やねん。

「・・・」

とある番組の収録日・・・。

梶原はとてつもなく落ち込んでいた。

その落ち込み方は尋常ではなく、相方である西野がたった数十分の間に梶原の溜息を何百回と聞いている程だ。

「梶、なんかあったん?」

この台詞は何度目になるのか、西野は数えることさえ嫌になっていた。

しかし、梶原から帰ってくる返事は・・・。

「なんでもない」

だけである。

いい加減、西野はイライラしてきていた。

だが、そのイライラは梶原に対してではない。

梶原が落ち込んでいる原因に対してイライラしているのだ。

「なぁ、梶」

「・・・」

「中川さんと何があったん?」

「っ・・・なんでもあらへんよ」

「なんでもないことないやろ」

「西野?」

西野はずっと下を向いてしまっている梶原の顔を自分の方に向かせ、真剣な眼差しで見つめた。

「お前、中川さんとほんまに付き合ってんのか?」

「な、なに?いきなり・・・」

「せやったら、何でこんなに落ち込んでんねん」

「・・・」

「中川さんなんかやめとき」

「・・・っ」

「俺にしとき」

「!?・・・西野っち?」

「梶が好きやねん」

西野は梶原を優しく抱きしめた。

その西野の優しさに、自然と泣きたくなってくる梶原。

その時・・・。

「西野、梶から離れろや」

「嫌ですね」

「な、中川さん!?」

中川の低い声が梶原の耳に飛び込んできた。

見れば、楽屋の入り口に中川が立っている。

梶原は慌てて西野から離れようとするが、西野がそうさせてはくれない。

「に、西野っち・・・離してやっ」

「梶は中川さんとおらん方がええ」

「何言うてんねん、お前」

西野の言葉に、中川の目に怒りが含まれる。

「俺は、アンタと付き合いはじめてから梶の笑顔を見てません」

「・・・西野っち」

「アンタとおらん方が梶の為やねん」

「・・・」

「アンタは梶を不安にさせるだけなんや」

「・・・そうかもしれへん」

「中川さん?」

「梶、すまんかったなぁ」

そう言い残して、中川は楽屋から出ていった。

「・・・っ」

梶原は何も言わずに楽屋を出ていった中川に対し、涙を流した。

そんな梶原を西野は優しく抱きしめてやるが、梶原に突き飛ばされてしまう。

「梶?」

「ごめん、西野っち・・・。俺には、中川さんだけやねんっ!」

「梶!」

西野の声に振り返らず、梶原は中川を追いかけた。

「中川さん!!」

「・・・梶」

「俺を捨てないでくださいっ」

「俺はお前を不安にさせるだけや」

「そないなことないです!俺には中川さんだけや!」

「・・・梶」

「中川さんが好きや・・・」

「・・・俺も、梶が好きや」

「でも、いつだって不安やねん。あなたは誰にでも優しいから・・・」

「梶、ごめんなぁ」

「だけど、誰にでも優しいあなたが好きなんや」

そう言うと、梶原は大きめ目からボロボロと大粒の涙をこぼした。

そんな梶原を、中川は強く抱きしめてやる。

「俺には梶だけや」

「俺にも中川さんだけです」

俺はいつだって不安だけど、俺にはあなただけしかいないんです。

end

コメント

中梶です。すいません、好きなんですよ。

そして、西野が可哀想ですねぇ。

実は、むくわれない西野を書くのが好きな私(死)。

西野ファンの方、本当にごめんなさい。

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