<言わない>

決して言わないから。

お前との関係を壊さないから。

言えないんじゃなくて、言わないだけ。

この気持ちを捨てることはできないけど・・・。

絶対に言わないから。

「児島、ここの立ち位置どうする?」

「え?あ、ごめん。聞いてなかった」

「はぁ?しっかりしろよ、本番は明日だぜ?」

「悪い」

「考え事でもしてたのか?」

「・・・ちょっとな」

考えてたよ、お前のこと。

こうして二人でネタ合わせしているだけなのに、俺の心臓は早鳴っている。

こうして向かい合わせに座ってると、お前の顔が近くて・・・。

「児島?」

「うわっ!」

「何驚いてんだよ」

気が付けば、目の前に渡部の顔。

あと数センチで唇が触れ合うくらい近い。

「・・・」

もしも、俺と渡部が恋人なら、例えキスしても問題ない・・・なんて。

何を馬鹿なことを考えている?

俺は考えを消し去るように首を横に振った。

そんな俺を不思議そうに見る渡部。

お前は知らないんだ。

俺がお前に抱いている感情を・・・。

「続きしようぜ」

「大丈夫か?児島」

「ああ。何でもない」

ごめんな、好きになって・・・。

でも、言わないから。

お前との関係を壊さないから。

だから、せめて・・・。

「・・・ごめん」

「あ?何か言ったか?」

「いや・・・」

想うことだけは、許してくれ。

end

コメント

携帯サイトに掲載していた「言わない」のリニューアルです。

続きます!読んでくださっている方がいるそうなので・・・。

本当に嬉しいです。読者がいる限り、頑張ります!

でも、終わるのかな・・・コレ。

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