<ずっと一緒>
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ある日、大熊に不吉な話を聞いた。
「上田さん、綺麗な女の人と歩いてましたよ」
「・・・友達だろ」
「それにしては、やけに親密でしたけど?手なんか繋いでたし」
「・・・」
平静を装ったけど、内心では心臓が早く鳴っているのがわかる。
俺は急いで上田の携帯に電話をかけた。
だけど・・・。
「上田さん、出ないんですか?」
「・・・っ」
何で出ないんだよ。
今日は仕事なかったはずだろ?
まさか、その女と一緒にいるのか?
無性に泣きたくなったけど、後輩の前だから必死で我慢した。
「有田さん、大丈夫ですか?」
「・・・おう」
「送りましょうか?」
「・・・いい。帰るわ」
向かう先は自宅。今日は上田の家による気にはなれない。
ドアをあけて、上田が女といたらどうする?
きっと、まともに立つことさえできない。
「・・・俺って馬鹿だな」
上田の口から聞いたわけじゃないのに。
「信じてやれよ」
上田のことが好きすぎて、不安が増幅する。
その時、携帯が鳴った。
「・・・もしもし?」
『あ、哲平?今どこ?』
「・・・上田」
『なんだよ、元気ねぇな』
「今まで何してた?」
『あ?今日は本屋行って欲しい本探してたけど?』
「なんで、さっき出なかったんだよ」
声が震えてる気がした。
『ああ、悪い。マナーモードにしてたから気付かなかったわ』
「・・・女といたんじゃないのか?」
『はぁ?何言ってんだ?』
「大熊から聞いた。お前が、女と歩いてたって」
『大熊から・・・?』
「本当なのか?俺のこと、嫌いになった?」
気が付けば、俺は涙を流していた。
上田も俺が泣いていることに気付いたのか・・・。
『何で泣いてんだよ。つうか、そんあん信じるなよ』
「・・・だけど」
『俺はお前だけだ』
「・・・本当に?」
『本当だよ。あーもー、面倒くせぇな!今からそこ行ってやる!!』
「え?」
『どこだ!?』
「・・・×○スタジオの前」
『わかった。待ってろよ!』
そう言って、上田が電話をきった。
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数十分後。
「哲平!」
名前を呼ばれて振り返ると、少し怒ったような表情の上田がいた。
「・・・上田」
「お前、大熊の話なんか信じたのか?」
「・・・だって」
「俺が好きなのはお前だけだ」
「・・・だけど、不安なんだよ」
「何が不安なんだよ」
「お前のこと好きすぎて、わかんなくなんだよっ」
「・・・哲平」
不覚にも、またもや涙が溢れてくる。
なんか、今日の俺って泣いてばかりだ。
かっこ悪い・・・。
「こっち向けよ」
「・・・」
「不安なのは俺だって同じなんだよ」
「・・・」
「お前が本当に俺なんかを好きでいてくれるのかってな」
「当たり前だろっ」
「じゃあ、そんなこと言うなよ」
「・・・晋也」
上田に強く抱きしめられ、俺は今まで考えていたことが小さいことのように思えてきた。
「ごめん」
「つうか、ちょっとショックだった」
「え?」
「信じてもらえてねぇんだなって」
「あっ・・・ご、ごめん」
「いいよ、もう。そのかわり、今日は俺の家来るだろ?」
「・・・いいぜ///」
「じゃあ、決まりVV」
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後日・・・。
上田が大熊に問い付けたところ・・・。
「なんだ、仲直りしちゃったんですか?残念だなぁ」
「おまえ、どういうつもりだよ」
「うまいとこ別れてくれたら都合よかったのに」
「大熊・・・まさか、お前・・・」
「俺、あきらめないっすから」
「・・・俺だってな、負ける気は・・・」
「上田さんのこと」
「・・・はぁ!?」
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END
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コメント
最後のオチが気に入ってます。
自己満足ですいません。
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