<悲哀3>
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俺が一人じゃ生きていけないのを知っているくせに。
どうしてお前は俺の前に現れるの?
お前は俺のそばにいてもくれないくせに。
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宇治原さんと付き合うようになって数カ月・・・。
初めは西野の代わりだったかもしれないけれど、時がたつにつれて俺は宇治原さん自身のことを好きになっていった。
西野のことを忘れたわけではないけれど、今は西野のことで悲しむことはない。
「梶、俺の家寄ってくか?」
「はいっ」
「じゃあ、どっかで飯でも食っていくか」
「俺、ラーメンがいいですっ」
「この間もラーメンやったろ」
「駄目ですか?」
「・・・しゃあないなぁ」
「やったーvv」
優しくて、俺の弱いところも好きだと言ってくれた宇治原さん。
西野とはまた違う優しさで俺を支えてくれる人。
とにかく今が幸せで、西野もそれを喜んでいてくれると思ってた。
だけど、それは俺の思い違いだったのかもしれない。
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その夜、夢を見た。
本当に何カ月ぶりかの、西野の夢。
久しぶりに大好きだった人に会えたのに、何故か俺は落ちついていた。
「久しぶりやな」
笑顔でそう言う。
だけど、西野は何も言わない。
「どないしたん?」
ただ黙って、悲しそうな顔をしていた。
何か言いたげに・・・。
「西野?どうして、そんな顔してんねん」
「・・・梶」
西野が口を開いて俺の名を呼ぶ。
久しぶりに聞いた西野の声。
どうしてそんな悲しそうに俺を呼ぶの?
「西野・・・?」
「梶、俺を忘れたんか?」
「忘れてへんよ」
「忘れんといて」
「忘れてない!」
「・・・忘れんといて」
西野は泣いていた。
俺はコイツの泣いた顔を初めて見た気がする。
強くて、優しくて、俺の泣き言を受け入れてくれた西野。
それなのに、そんな西野が泣いている。
自分を忘れるなと泣いている。
「どうしてや・・・俺はお前のことを忘れてないのに」
「・・・宇治原さん」
「!?」
「俺のこと、忘れんといて」
ああ、そういうことか・・・。
俺が宇治原さんと付き合っているから?
お前がいないことで、俺が悲しむことがなくなったから?
「いつまでも、悲しんでろっていうことか?」
お前に捕らわれて生きろ、ということ?
お前は、俺が一人で生きていけないことを知っているくせに。
お前は俺のそばにいてもくれないくせに。
「どないせぇっちゅーねん」
お前が喜んでいてくれるなんて、どうして思ったんやろ。
そんな思い違い、どうしてしたんやろ。
目が覚めた後、急に宇治原さんの声が聞きたくなったけど。
西野がどこかで見ているような気がした。
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