<悲哀4>

あれから毎晩のように西野は俺の前に現れる。

わかってるから。

お前のこと忘れてへんから。

せやから、そんなに泣かないで・・・。

「梶、今日は終わったらどないすんねん」

「今日は・・・帰ります」

「昨日もそう言うたやないか」

「・・・すいません」

「お前、俺のこと避けてるやろ」

「・・・そんなこと、ないですよ」

「嘘つけや・・・なんか悩みあんなら聞いたるで?」

ああ、そんな簡単に人に打ち明けられるような悩みやったら・・・。

「大丈夫です」

「・・・そうか。話す気になったらいつでも来てええからな?」

「はい」

ああ、また今日も夢を見るんか。

寝るのが嫌や。

寝たくない・・・。

西野に会うのが怖い。

「・・・・つっ」

近くにあったカッターで手を切りつけた。

赤い血が床にぽたっと落ちる。

ああ・・・まるであの時のようやな。

お前が死んだ時も、こんな色の液体がたくさん溢れてたわ。

「・・・いっそ、俺もお前のとこに行けばええの?」

目の前で悲しそうな顔をしている西野に声をかけた。

なんや、俺はまた寝てしまったん?

「なぁ、これで満足?」

せせら笑いながら西野に声をかける。

何でそんな顔してんねん。

泣きたいのはこっちやぞ?

「なんとか言えや!」

「・・・梶」

「・・・」

「ごめんな」

「・・・何謝ってんねん・・いまさら、何で謝ったりすんねん」

もう戻れない。

宇治原さんの隣で笑うことなんて出来ない。

「なぁ・・・どうして俺を一人にしたん?」

いっそのこと、俺を連れてってくれや。

「梶・・・」

「なぁ・・・どうして死んだんや」

「ごめん」

「そんなんが聞きたいんとちゃうわ」

「愛してる」

「俺も・・・愛してるで」

「梶・・・忘れんといて」

「忘れない・・・忘れるわけがない・・・」

お前みたいな奴、忘れられるはずないやろ。

「俺を一人にせんといて・・・」

「何言うてんねん。お前が俺を一人にしたんやろ」

「・・・梶」

「ほんま、お前の所に行こうかな」

いつの間にか手に持っていた刃物。

「用意周到やな」

それを手首まで持っていく。

少し力を入れて横に引いて・・・。

ああ、夢のはずなのに・・・。

「・・・痛いわ」

夢のはずなのに、何でこんなにリアルなん?

夢のなかなのに、何でこんなに血が出てるんかな。

ほんま、リアルすぎて死んでしまいそうや。

「宇治原さん・・・ごめんなさい・・・」

貴方にはほんまに感謝してます。

俺を支えてくれてありがとう。

せやけど、やっぱり俺は西野やないとあかんみたいです。

西野も俺やないとあかんねん。

せやから、西野と一緒に行こうと思います。

ほんま・・・大好きです。

翌日、梶原雄太の遺体を宇治原が発見した。

手に刃物を持ち、手首には無数の傷跡が残っていた。

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